登山〜クライミング〜は理想的な有酸素運動です!Vol.6
「 LT レベルをヤマに活かす 」の第2弾です
前回までのエネルギー源としての糖質と脂肪の話題から、今回はいよいよこれらのエネルギー源を効果的に燃焼して山での運動に活かしていきます。
糖質は使いやすいエネルギー源で比較的簡単に燃えてくれる手っ取り早いエネルギー源です。
ATP(アデノシン3リン酸Adenosine triphosphate)は、生体内の「エネルギー通貨」と呼ばれるものです。 このどこでも使える便利なエネルギーを手っ取り早く 作りだせるのが、糖質を使った解糖系と呼ばれる経路です。グルコース(ブドウ糖)という高い結合エネルギー(高カロリー)をもった燃料を使いやすい形に変えていくプロセスになります。
ただ手っ取り早い分、燃費は悪く、 グルコース1個からATPが2つしかできません。
(正確には4個できますが、ATPを作る間に2つ使ってしまいます)
また、糖は溜めておけないので、この経路ばかりだと、すぐにガス欠になってしまいます。
エネルギーを取り出したあと、残るのが生産物のピルビン酸(別名 焦性ブドウ糖)そのままでは、とても勿体ないので、さらにエネルギーを得るため2つの方法で使われます。一つは、このあと脂肪のエネルギー取り出しでもご説明するTCAサイクルや電子伝達系に組み込むため、アセチルCoAというものに変換して利用する方法 。
これには酸素が必要になります。 ここで十分な酸素が供給されないと嫌気的に分解されて、動物では乳酸に変換されます。
*ちなみにある種の植物(酵母)では、これがエタノールに変換。いわゆるアルコール発酵。
これがもう一つの代謝になります。
一方 の体脂肪は簡単には燃えてくれません。
そのままではダメなので 燃える前に燃えやすい形に分解される必要があります。
脂肪の蓄積を促すのはインスリンというホルモンでした。 そして蓄積された脂肪の分解を促すのもホルモンです。
血糖値が下がると エネルギーを確保せよ命令が発令されます。膵臓から分泌されるグルカゴン交感神経から出るノルアドレナリンなどを脂肪細胞の受容体がキャッチすると細胞内のホルモン感受性リパーゼ(HSL)などの酵素が、中性脂肪の固まりの油滴に接触。
脂肪細胞を出た脂肪酸(遊離脂肪酸 FFA Free Fatty Acid)は、血清アルブミンというタンパク質と結合して 血液に馴染むようになり、あらゆる細胞で利用されることになります。
一方のグリセロールは肝臓で糖質か中性脂肪に再合成されて活用されるようになります。
そして肝心の脂肪酸が燃焼されるのは、細胞内にあるミトコンドリア。
一方のグリセロールは肝臓で糖質か中性脂肪に再合成されて活用されるようになります。
そして肝心の脂肪酸が燃焼されるのは、細胞内にあるミトコンドリア。
ミトコンドリア!Mitochondria 懐かしいひびきですよね。ミトコンドリアについては、それだけで 10回シリーズくらいでは収まりきらないぐらいかもしれないので ここでは簡単に。
ミトコンドリアは細胞内に 数百から数千個も含まれている細胞内器官で、細胞にエネルギーを供給する超小型エンジンのような存在です。その2大燃料が糖質と脂肪。
細胞から核と細胞内器官を除いた部分を細胞質と呼びますが、糖質は細胞質でもミトコンドリアでも代謝されますが、脂肪はミトコンドリアでしか代謝されません!
そして脂肪酸の最大の消費場所は筋肉Muscle。カラダを動かすために膨大なエネルギーを消費する筋肉には、体内のミトコンドリアの80%ほどが集中しています。
脂肪酸が燃えるプロセスは複雑ですが、
主に3ステップです ① β酸化 ② TCA回路 ③ 電子伝達系。この三つです。
① β酸化
このプロセスは脂肪酸から炭素を次々と切り離してアセチルCoAという物質を作るプロセスです。
このプロセスは結構複雑で何段階もの反応が必要になります。
(*脂肪酸の細胞内への取り込みは脂肪酸トランスポーターCD36/FAT経由)
(*脂肪酸 + CoA + ATP ⇔ 脂肪酸アシルCoA + AMP + PPi)
エネルギーを得るための下ごしらえですが、これがいろいろと大変。
また途中、脂肪酸アシルCoA というものをミトコンドリアの内膜にとりこむプロセスでは、カルニチンが必要になります(*脂肪酸アシルCoAはミトコンドリア内膜を直接透過できないため、ここにカルニチンが作用して、取り込みを助けています)
カルニチン!ダイエットなどでもうおなじみですね。実はこのプロセスに不可欠だったんですね。カルニチンは肝臓や腎臓で生合成もされます。
その際には、Fe鉄、VC(ビタミンC)、ナイアシンが必要になります。*ちなみに様々な感染症に用いられるメイアクト®(セフジトレン)やトミロン®(セフテラム)等のピボキシル基という官能基をもった抗生物質の副作用で血中のカルニチンが低下することがあります。血中のカルニチンが薬剤の代謝物(ピバリン酸)と結合して身体の外に排泄されてしまうためにおこります。カルニチンの低下によりエネルギー供給が糖質に偏り、低血糖症や高アンモニア血症をおこします。特に小さなお子さんなどで食事・栄養がとれていないときなどのこれらの薬剤の服用には十分な注意が必要です。このため幼児への投与は2週間までと決められています。
さらに最近話題のコーヒークロロゲン酸!これも実は脂肪酸のミトコンドリアへの取り込みを促進することで余分な脂肪の燃焼に働くといわれています。コーヒーポリフェノール。
ひところ話題になったαリポ酸やコエンザイムQ10(CoQ10)。これらも実はミトコンドリア内で作用するものです。ただしコエンザイムQ10とα-リポ酸がサプリメントとして効果があるのは、飲んでミトコンドリア内に入り込んで本来の効果を示すからではなく、細胞質ゾル(サイトゾルと呼びます)で抗酸化物質として働くからだといわれています。誤解しがちなのでご注意を。
内臓脂肪の本来の目的は、消化管から吸収された栄養素が肝臓へ運ばれる際、腸間膜の血管を通過。内臓脂肪はここに位置して、肝臓へ運ぶ栄養素の量を調節し、外部からエネルギー代謝システムを調整するものでした。ところがカロリー過多や運動不足などで、エネルギー収支バランスが崩れると有り余るエネルギーを溜める一方になってしまいます。
これが余分な内臓脂肪の正体です。さらに第3の脂肪(異所性脂肪)までつくようになると、これは「調節機構の破綻」となります。それぞれの臓器は独立して働いてはいますが、エネルギーに関しては互いに協調しています。過剰なエネルギーの摂取は、総合的なエネルギー代謝の調節がうまくいかなる ことを意味しているのです。
② TCA回路
ようやく下ごしらえ完了!ここからは、糖からできたアセチルCoAも同じ経路に入り、エネルギーを取り出していきます。
1937年にドイツの化学者ハンス・クレブスが発見したためクレブス回路とも呼ばれます。
(この功績により1953年にノーベル生理学・医学賞を受賞)図にあるピルビン酸というものは別名:焦性ブドウ糖 (pyroracemic acid) とも呼ばれるもので、これは解糖系と呼ばれる経路で、ブドウ糖(グルコース)から作られます。
無事ミトコンドリアに取り込まれたエネルギー源のアセチルCoA。
今度はこのTCAサイクルという いわば内燃器官で水素イオンH+を次々と分離します。
そうするとミトコンドリアの外側と内側の膜の間(膜間スペース:上図の緑色の部分)に水素イオンH+が溜まります。膜の外側と内側に濃度の差が生まれます。
これをH+(プロトン)の濃度勾配といいます。プロトン濃度の平衡を保つため、この濃度勾配を解消するようにプロトンが膜間スペースから膜の内側へ戻ります。 このときにエネルギーが生じます。実はこのTCAサイクルは、この濃度勾配を作り出すための水車のような役割をしているのです。この水車で生まれた 濃度の差を活かして爆発的なエネルギーが生み出されます。
「電気エネルギーを化学エネルギーに変換」
③ 電子伝達系
電子伝達系!これも懐かしい響きですよね。電子伝達系というのは、ミトコンドリアに搭載された超小型高性能モーターのようなものです。電子を巧みに受け渡しながら、プロトン濃度勾配が作られていきます。そこで重要な働きをするのが、 「有酸素運動」の「酸素O2」!酸素は電子吸引性が高く、この役割にピッタリ!ほかの元素より 効率よく電気エネルギーを引き出すことができます。進化の過程で酸素が選ばれたのは必然だったようです。
こうして出来上がったプロトン濃度勾配を駆動力にして、このモーターでATPといういわばどの細胞でも利用可能なエネルギー通貨が産生されます。このモーターはなんと毎秒1400回転という超高速で回転しています。
ATP(アデノシン3リン酸 Adenosine Triphosphate)は小さな分子で、水と反応するという簡単な反応で大きなエネルギーを生み出します。 生物体で用いられるエネルギー保存および利用に関与するヌクレオチドで、すべての真核生物がこれを直接利用しています。 生物体内の存在量や物質代謝における重要性から「生体のエネルギー通貨」とされています。
この「エネルギー通貨」という表現は本当にピッタリ!考えた人は天才です!
出来上がったATPはありとあらゆる場所でエネルギー源として利用されます。必要なときに必要な分だけ、細胞内のどんなエネルギーに変換可能!エネルギー通貨と呼ばれる所以です。グローバル通貨の$㌦のイメージです。逆にATPがないと心臓も脳も何もかも働きませんし、指1本すら動かせません。すべてはATPを生み出すために!
*エネルギーの収支式
(ΔG°’(標準自由エネルギー変化))
ATP + H2O → ADP(アデノシン二リン酸) + Pi(リン酸)ΔG°’ = −30.5 kJ/mol (−7.3 kcal/mol) ATP + H2O → AMP(アデノシン一リン酸、アデニル酸) + PPi(ピロリン酸) ΔG°’ = −45.6 kJ/mol (−10.9 kcal/mol)ATP→ADP→AMPと加水分解される過程で、エネルギーが産生されます。ATP1分子507g当たり7.3kcal! このエネルギーがすべての活動の源となります。ヒトは休憩していても1日に約40kg!ものATPを消費します。
このTCAサイクルと電子伝達系で生み出されるATPは、解糖系で生み出されるATPのなんと15倍以上!!高出力のエンジン。
今回でエネルギーをどうやって作り出しているかを お話できたので、次回こそLTレベルを実践に活かす! そしてAMPKやサーチュイン、PGC-1αなどをキーワードに 触れていきたいと思っています。
エネルギー代謝やその制御機構、活性酸素シグナルと酸化ストレスに関する分子生物学的解析は 近年急速に進展してきています。また運動生理学分野のみでなく、多くの疾患・病態との関連も明らかになりつつあります。 まさに日進月歩で!これまで明らかにされている生化学的代謝ネットワークと分子生物学的代謝ネットワークの融合の必要性が今問われています!
バックナンバー
登山~クライミング~ は理想的な有酸素運動! Vol.1
登山~クライミング~ は理想的な有酸素運動! Vol.2
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です! VOL.3. 山で使う筋肉の話
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.4 「 LT レベルを守る 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.5 「 LT レベルをヤマに活かす① 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.6 「 LT レベルをヤマに活かす② 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.7 「 LT レベルをヤマに活かす③ 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.8 EXERCISE & PGC-1α
ミトコンドリアは細胞内に 数百から数千個も含まれている細胞内器官で、細胞にエネルギーを供給する超小型エンジンのような存在です。その2大燃料が糖質と脂肪。
細胞から核と細胞内器官を除いた部分を細胞質と呼びますが、糖質は細胞質でもミトコンドリアでも代謝されますが、脂肪はミトコンドリアでしか代謝されません!
そして脂肪酸の最大の消費場所は筋肉Muscle。カラダを動かすために膨大なエネルギーを消費する筋肉には、体内のミトコンドリアの80%ほどが集中しています。
脂肪酸が燃えるプロセスは複雑ですが、
主に3ステップです ① β酸化 ② TCA回路 ③ 電子伝達系。この三つです。
① β酸化
このプロセスは脂肪酸から炭素を次々と切り離してアセチルCoAという物質を作るプロセスです。
このプロセスは結構複雑で何段階もの反応が必要になります。
(*脂肪酸の細胞内への取り込みは脂肪酸トランスポーターCD36/FAT経由)
(*脂肪酸 + CoA + ATP ⇔ 脂肪酸アシルCoA + AMP + PPi)
エネルギーを得るための下ごしらえですが、これがいろいろと大変。
また途中、脂肪酸アシルCoA というものをミトコンドリアの内膜にとりこむプロセスでは、カルニチンが必要になります(*脂肪酸アシルCoAはミトコンドリア内膜を直接透過できないため、ここにカルニチンが作用して、取り込みを助けています)
カルニチン!ダイエットなどでもうおなじみですね。実はこのプロセスに不可欠だったんですね。カルニチンは肝臓や腎臓で生合成もされます。
その際には、Fe鉄、VC(ビタミンC)、ナイアシンが必要になります。*ちなみに様々な感染症に用いられるメイアクト®(セフジトレン)やトミロン®(セフテラム)等のピボキシル基という官能基をもった抗生物質の副作用で血中のカルニチンが低下することがあります。血中のカルニチンが薬剤の代謝物(ピバリン酸)と結合して身体の外に排泄されてしまうためにおこります。カルニチンの低下によりエネルギー供給が糖質に偏り、低血糖症や高アンモニア血症をおこします。特に小さなお子さんなどで食事・栄養がとれていないときなどのこれらの薬剤の服用には十分な注意が必要です。このため幼児への投与は2週間までと決められています。
さらに最近話題のコーヒークロロゲン酸!これも実は脂肪酸のミトコンドリアへの取り込みを促進することで余分な脂肪の燃焼に働くといわれています。コーヒーポリフェノール。
これはちょっと誤解を生みそうですね |
【コラム】 脂肪について、ここで簡単にまとめると 摂りすぎた余分なエネルギーを脂質というかたちに変換して一時的に溜めておくシステムSystemととらえることができます。人類の歴史の大半は、飢えとの闘いだったため、余分に摂ったエネルギーを溜めておく必要がありました。いつでも食べられるどころか、今度いつ食べられるかもわからない毎日だったわけですから。
進化の過程でこういったシステムが自然と備わっていったんです。長い年月を経て、いつでもエネルギーが確保できるようになったのは、人類の長い歴史の中ではごくごく最近なのです。エネルギーが余るということは、そもそも想定外だったため、現代のような飽食の時代で、エネルギーが有り余るというような状態にまだ進化が追いついていないのかもしれません。
進化の過程でこういったシステムが自然と備わっていったんです。長い年月を経て、いつでもエネルギーが確保できるようになったのは、人類の長い歴史の中ではごくごく最近なのです。エネルギーが余るということは、そもそも想定外だったため、現代のような飽食の時代で、エネルギーが有り余るというような状態にまだ進化が追いついていないのかもしれません。
内臓脂肪の本来の目的は、消化管から吸収された栄養素が肝臓へ運ばれる際、腸間膜の血管を通過。内臓脂肪はここに位置して、肝臓へ運ぶ栄養素の量を調節し、外部からエネルギー代謝システムを調整するものでした。ところがカロリー過多や運動不足などで、エネルギー収支バランスが崩れると有り余るエネルギーを溜める一方になってしまいます。
これが余分な内臓脂肪の正体です。さらに第3の脂肪(異所性脂肪)までつくようになると、これは「調節機構の破綻」となります。それぞれの臓器は独立して働いてはいますが、エネルギーに関しては互いに協調しています。過剰なエネルギーの摂取は、総合的なエネルギー代謝の調節がうまくいかなる ことを意味しているのです。
② TCA回路
ようやく下ごしらえ完了!ここからは、糖からできたアセチルCoAも同じ経路に入り、エネルギーを取り出していきます。
TCA回路 懐かしいですね。学校ではクエン酸回路として習ったかも? |
(この功績により1953年にノーベル生理学・医学賞を受賞)図にあるピルビン酸というものは別名:焦性ブドウ糖 (pyroracemic acid) とも呼ばれるもので、これは解糖系と呼ばれる経路で、ブドウ糖(グルコース)から作られます。
この図の左側が解糖系・右側がTCA回路と電子伝達系 |
今度はこのTCAサイクルという いわば内燃器官で水素イオンH+を次々と分離します。
そうするとミトコンドリアの外側と内側の膜の間(膜間スペース:上図の緑色の部分)に水素イオンH+が溜まります。膜の外側と内側に濃度の差が生まれます。
これをH+(プロトン)の濃度勾配といいます。プロトン濃度の平衡を保つため、この濃度勾配を解消するようにプロトンが膜間スペースから膜の内側へ戻ります。 このときにエネルギーが生じます。実はこのTCAサイクルは、この濃度勾配を作り出すための水車のような役割をしているのです。この水車で生まれた 濃度の差を活かして爆発的なエネルギーが生み出されます。
「電気エネルギーを化学エネルギーに変換」
③ 電子伝達系
電子伝達系!これも懐かしい響きですよね。電子伝達系というのは、ミトコンドリアに搭載された超小型高性能モーターのようなものです。電子を巧みに受け渡しながら、プロトン濃度勾配が作られていきます。そこで重要な働きをするのが、 「有酸素運動」の「酸素O2」!酸素は電子吸引性が高く、この役割にピッタリ!ほかの元素より 効率よく電気エネルギーを引き出すことができます。進化の過程で酸素が選ばれたのは必然だったようです。
こうして出来上がったプロトン濃度勾配を駆動力にして、このモーターでATPといういわばどの細胞でも利用可能なエネルギー通貨が産生されます。このモーターはなんと毎秒1400回転という超高速で回転しています。
ATP(アデノシン3リン酸 Adenosine Triphosphate)は小さな分子で、水と反応するという簡単な反応で大きなエネルギーを生み出します。 生物体で用いられるエネルギー保存および利用に関与するヌクレオチドで、すべての真核生物がこれを直接利用しています。 生物体内の存在量や物質代謝における重要性から「生体のエネルギー通貨」とされています。
この「エネルギー通貨」という表現は本当にピッタリ!考えた人は天才です!
出来上がったATPはありとあらゆる場所でエネルギー源として利用されます。必要なときに必要な分だけ、細胞内のどんなエネルギーに変換可能!エネルギー通貨と呼ばれる所以です。グローバル通貨の$㌦のイメージです。逆にATPがないと心臓も脳も何もかも働きませんし、指1本すら動かせません。すべてはATPを生み出すために!
(ΔG°’(標準自由エネルギー変化))
ATP + H2O → ADP(アデノシン二リン酸) + Pi(リン酸)ΔG°’ = −30.5 kJ/mol (−7.3 kcal/mol) ATP + H2O → AMP(アデノシン一リン酸、アデニル酸) + PPi(ピロリン酸) ΔG°’ = −45.6 kJ/mol (−10.9 kcal/mol)ATP→ADP→AMPと加水分解される過程で、エネルギーが産生されます。ATP1分子507g当たり7.3kcal! このエネルギーがすべての活動の源となります。ヒトは休憩していても1日に約40kg!ものATPを消費します。
このTCAサイクルと電子伝達系で生み出されるATPは、解糖系で生み出されるATPのなんと15倍以上!!高出力のエンジン。
今回でエネルギーをどうやって作り出しているかを お話できたので、次回こそLTレベルを実践に活かす! そしてAMPKやサーチュイン、PGC-1αなどをキーワードに 触れていきたいと思っています。
エネルギー代謝やその制御機構、活性酸素シグナルと酸化ストレスに関する分子生物学的解析は 近年急速に進展してきています。また運動生理学分野のみでなく、多くの疾患・病態との関連も明らかになりつつあります。 まさに日進月歩で!これまで明らかにされている生化学的代謝ネットワークと分子生物学的代謝ネットワークの融合の必要性が今問われています!
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登山~クライミング~ は理想的な有酸素運動! Vol.1
登山~クライミング~ は理想的な有酸素運動! Vol.2
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です! VOL.3. 山で使う筋肉の話
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.4 「 LT レベルを守る 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.5 「 LT レベルをヤマに活かす① 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.6 「 LT レベルをヤマに活かす② 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.7 「 LT レベルをヤマに活かす③ 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.8 EXERCISE & PGC-1α