花粉症シーズン★今日の抗アレルギー薬★

【今日の薬】 花粉症シーズンということで「抗アレルギー薬のまとめ」

第一回 2016.2.19 :(
近日中に更新予定)
第二回 2016.2.24 更新
第三回 2016.12.10 更新
第四回 2018.1.30 更新


































Ranking of Oral Anti-allergy drugs

経口抗アレルギー薬ランキング

*ランキングはあくまで個人の意見です。


1位 オノン®(小野薬品工業)Pranlukast


その名の通り小野薬品の名作中の名作・ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA;LeukoTriene Receptor Antagonist)。一時代を築いたが今はジェネリックに時代を譲った。開発コード:ONO1078も有名。シングレア®・キプレス®(Montetlukast)と甲乙つけがたいが、世界初の抗ロイコトリエン薬であり、さらに純国産であることに敬意を表して栄えある第1位に。その高い安全性と有効性、小児から高齢者まで年齢・性別を問わず、安心して服用できるのは特筆もの。同じ抗ロイコトリエン薬のアコレート®(Zafirlukast)が安全性面でほぼ使い物にならなかったのと対照的。喘息のコントローラーとして最重要薬剤だが、花粉症シーズンということで鼻粘膜過敏症候の改善・コントロール薬としてランキング。一刻も早くスイッチOTC化が待たれる。詳しくは本文で。

2位 シングレア®(MSD)・キプレス®(杏林)Montelukast


僅差の2位にMontelukastをランクイン。2ブランド2チャンネルで少々ややこしいうえに、また年齢や用法・用量、適応症、2ブランドのおかげで剤型種類が多すぎる・・・諸々、薬剤師泣かせ(反面、様々な剤型で選択肢が多い)ではあるが、安全性や有効性はお墨付きこれぞ、ザ・抗アレルギー薬キプレス®やオノン®で錠剤・カプセルデビューする子供さんは多い。もちろん成人・小児問わず、喘息のコントローラーとしてもなくてはならない薬剤。

3位 アレグラ®(SANOFI)Fexofenadine



一般の方でも知らない人はいないといっても過言ではない世界で最も消費されている抗ヒスタミン薬の一つ。日本で初めてブリッジングスタディー(海外の臨床試験データを承認申請に使う手法)で国内の第III相臨床試験を実施せず、1999年に製造販売承認されたことでも有名。トリルダン®(テルフェナジン)の活性代謝物。テルフェナジンからフェキソフェナジンへの継承の経緯はこちらを参照。効果はマイルドだが、それも大事なニーズ。眠気無し優先。眠くならないのにはわけがある。また2015年には待望のドライシロップ製剤も発売となり、小さな子供さんでものめるようになり、利便性がさらに向上した。
スイッチOTC:アレグラFX(久光製薬)があるのも魅力。薬剤パフォーマンスとマーケティングが見事に融合した大成功例

*大事なものを忘れていたので追記
3位プラスワン ディレグラ®配合錠(SANOFI)Fexofenadine/Pseudoephedrine
FEX30mgとPSE60mgの配合剤。2012.12発売。ディレグラ®の発売で鼻閉型への選択肢が増えた。PSEは一般用医薬品として、第一世代抗ヒ薬と配合で鼻炎用内服薬・かぜ薬としておなじみ。PSEは吸収が速く、尿排泄急速のため、ディレグラ®では徐放化、1日2回での服用が可能となった。またPSEは覚醒剤原料のため、製剤濃度を希釈せざるを得ず、錠剤が大型化。錠剤重量はアレグラ30mg錠の約6倍。これが要因でfexofenadine量を60mgにできなかったのが残念。当然のことながら連用は不可。1~2週間(ガイドライン2016)

4位 ザイザル®(GSK)Levocetirizine




ラセミ体のジルテック®(Cetiriizine)R-エナンチオマー(光学分割活性体)。ジルテックの優れた有効性が、光学分割によりさらにブラッシュアップされた(ジェネリック対策でもあるが…)。耳鼻科(アレルギー性鼻炎)ではザイザルを、皮膚科(皮膚掻痒)にはジルテックを、と使い分けられる場合も多い。眠気は若干緩和されたもののザイザルでも眠い人はやっぱりいる。アレルギー疾患の低年齢化で小児でものみやすいシロップ剤が発売されたのも絶妙のタイミング。以前は子供さんには、第一世代のペリアクチンシロップやポララミンシロップの処方が主だったが、副作用が多く(第一世代の抗ヒスタミン薬は中枢刺激作用が思いのほか強く、痙攣素因などがあれば使わない)、今はもうほとんど使われない。ザイザルシロップの独壇場。だがやっぱり心配。

【朗報】市販用セチリジン(Cetirizine)はつい先日(2016.2.1)要指導医薬品から第一類医薬品に移行され、インターネットなどによる特定販売が可能になり、利便性が向上。セルフメディケーションのオプションが増えた。

5位 アレロック®(協和発酵キリン)Olopatadine


三環系で主作用は抗ヒスタミンだが、抗ロイコトリエン作用も併せ持ち、抗トロンボキサン、PAFなどの化学伝達物質の遊離抑制作用、IL-6やIL-8等のサイトカイン分泌抑制作用、血管内皮細胞における細胞接着分子の発現抑制作用、好酸球浸潤抑制作用なども示すいわばマルチインヒビター。このため粘膜の炎症・過敏症候を効率よく改善。非常によく効く優れた薬剤。点眼製剤のパタノール®(アルコン・協和発酵)もあり、これもとてもよく効き、市場を席捲。あれ?3位でもよかったかな?...。強い眠気は強い作用の諸刃の剣。「皮膚掻痒で眠れない」といった症状にも非常によく使われる。小児製剤を顆粒にせざるを得なかったのが残念。飲みづらい。眠い。


6位 クラリチン®(MSD・塩野義)Loratadine



Schering社の傑作抗ヒスタミン薬:ポララミン®の後継抗ヒスタミン薬。やはりこのクラリチン®も爆発的にヒット。世界最初の発売は1988年にベルギー。すぐ効く・長く効く・眠くならない。ただし利便性が高い分、作用はマイルドというかあまり効かない。その分安心。血液脳関門においてロラタジンは排出輸送系のP糖蛋白質によって細胞外へ排出される性質をもち、中枢移行がほとんどない。結果、眠気の心配がなく学生・社会人の御用達。朝はクラリチン&夜はアレロックなんていうのもあり。
アレグラ・クラリチン以外の抗ヒスタミン薬は、「眠くなりません」とうたっていても「眠くなります」
レディタブ錠(口腔内崩壊錠)は評判が悪い(シートが大きく、錠剤が取り出しにくくて、しかもシートのまま保管しても湿気に弱い)。


★記述のうち「眠気」=「インペアード・パフォーマンス」と捉えてください。字数の都合で「眠気」と表現しています。 
インペアード・パフォーマンス: 集中力判断力、作業能率が低下すること眠気を自覚しているかどうかは問わず、また自覚しにくい鈍脳とも呼ばれる。

車・機械の運転について
*(  )はPETによる脳内H1受容体占有率
a.運転を禁止
 クロルフェニラミン(静注)(85%)
 ケトチフェン(76%)
 クロルフェニラミン(50%)
 オキサトミド(50%)
 セチリジン(23%)
 メキタジン(22%)
 アゼラスチン(20%)
 オロパタジン(15%)
b.運転注意
 エバスチン(9%)
 エピナスチン(7%)
 ベポタスチン
c.記述なし
 フェキソフェナジン(2%)
 ロラタジン

ランク外

アレジオン®(エピナスチン):抗ヒ剤。古い(1994年発売)・効かない・眠くなる・苦い。ドライシロップはよく処方されるが苦い。シロップ剤はあまりの苦さに即販売中止に追い込まれた。パッケージがこれ以上ないほど、Boehringer Ingelheimでにくめない。OTCあり(医療用と名前が同じで分かりやすいが、やっぱり売れない)
ゼスラン®・ニポラジン®(メキタジン):抗ヒ剤。古い(1983)・光過敏症に注意要。高齢者に口渇が頻発。OTCあり(写真下)(旭化成・アルフレッサだが元ネタはSanofi)

ザジテン®(ケトチフェン):抗ヒ剤。古い(1983)・効かない・眠くなる。効果発現に時間がかかる。てんかん素因に禁忌。同じ名のOTCあり→(Novartis)











セルテクト®(オキサトミド):抗ヒ剤。古い・まあ効く・BBB素通りで錐体外路症状に注意要(特に小児)。リスク評価からOTCはない。(協和発酵キリン)





アゼプチン®(アゼラスチン):抗ヒ剤(弱い抗コリン作用あり)。古い(1986)。強烈に苦く味覚異常もしばしば。効かないので処方もまずみない。ガスター(抗H2だけど)の方が効くかも。OTCあり。ヒューマンヘルスケアのEisai。
タリオン®(ベポタスチン):抗ヒ剤。比較的新しい。まあ効く。効果発現が速く使いやすい。眠くはなる。(田辺三菱)


レミカット®・ダレン®(エメダスチン):抗ヒ剤。古い。まあ効くが、強烈に眠くなる。(興和)

バイナス®(ラマトロバン):抗トロンボキサンA2薬。効かない。処方を見かけることはまずない。(日本新薬)

エバステル®(エバスチン):抗ヒ剤。まあ効く。処方もまあ見かける。眠くもなる。大日本住友製薬と明治製菓ファルマの1ブランド2チャンネル。併売はいろいろと面倒。同じエバステルという名のOTCあり(こちらは興和)。

ペリアクチン®(シプロヘプタジン):古すぎる。抗セロトニン&抗ヒ。抗コリン作用もあり、とにかく使いづらい。親御さんの希望で子供を眠らせるために処方したら逆に興奮状態に・・・なんてこともしばしば。正直もう処方しないでほしい。乳幼児では痙攣・呼吸停止・幻覚等の報告多い。当然のことながらOTCはない。
(現在は日医工だが元ネタはMerck)

レスタミン®(ジフェンヒドラミン):古すぎてほぼ化石。抗ヒ剤中最も眠気が強い。抗コリン作用も大。当然のことながら緑内障や前立腺肥大には禁忌。処方を見ることはないと思うが、もし見かけたら相当レアなので記念に撮っておこう!博物館的価値のみ。その強い眠気でOTCに催眠鎮静薬として転用(ドリエル®)されているが、正直売るのに勇気がいる。連用したらダメ!止痒作用がしっかりしているので痒みの強い皮膚症状に外用剤としては重宝する。外用なら安心。
「こ、こんな古い薬を.....父さん、酸素欠乏症にかかって......」by アムロ
(興和だが、元ネタはアメリカ製)


ポララミン®(d-クロルフェニラミン):古すぎるが傑作。発売は半世紀以上前。発売当初から第2世代抗ヒスタミン薬が発売されるまでは抗ヒスタミン薬といえば、これだった。当時は、これでもリスクとベネフィットのバランスがとれていた。Scheringといえば、ポララミン。今はそのScheringもMerckに買収されてMSD。とにかく安いのとすぐ効くのでいまだに重宝する。特に軽い蕁麻疹。復効錠という名の6mg錠製剤は販売中止。アレルギン®はdl体。当然のことながら使われない。OTCはありすぎて書ききれない。


ブロニカ®(セラトロダスト):抗トロンボキサンA2薬。華々しくデビューしたが、効かないのと肝機能障害が頻発。これももう処方を見ることはまずない。見たらついてるかも。宝くじ的。そういえば、セルタ®(セリバスタチン)の販売中止もこのころか・・・。アコレート®(Zafirlukast)といい、安全性面を軽視しすぎなのかも。王者武田の苦難の道のりはこのころからはじまっていたか


アレギサール®・ペミラストン®(ペミロラストカリウム): メディエータ遊離抑制薬。古い。あまり効かない。処方はたまに点眼で出るくらい。 ←同じ名前のOTCあり。 (ブリストル・マイヤーズ・スクイブ&田辺三菱)


インタール®(クロモグリク酸):メディエータ遊離抑制薬だが、内服では吸収されないため、内用薬は食前服用で小児の食物アレルギー専用。それも現在ではあまり使われない。もう治療法が変わった。外用(点鼻・吸入・点眼)はいまだに処方されるが、やっぱりあまり効かない。(Sanofi)


ケタス®・アイビナール®(イブジラスト):メディエータ遊離抑制薬。抗アレルギー薬としての価値はほぼ無いし、やっぱり処方も見ない。(杏林製薬)
リザベン®(トラニラスト):メディエータ遊離抑制薬。処方はほとんどケロイド・肥厚性瘢痕への適応でのもの。喘息や鼻炎にはあまり使わないし、効かない。パッケージがいかにもキッセイ。

アイピーディ®(スプラタスト):Th2サイトカイン阻害薬。抗ヒ作用はない。効果はう~ん?。(大鵬薬品工業)



ピレチア®・ヒベルナ®(プロメタジン):抗ヒ剤。かなり古い。止痒作用はやや弱いが、鎮静作用が強い。眠れないお年寄りによく使われたが、今はもう精神神経科や入院患者専用。(塩野義製薬)
アタラックス®(ヒドロキシジン):抗不安作用のある抗ヒ剤。ヒドロキシジンの活性代謝物の一つがセチリジン。広範な中枢抑制作用があり、高齢者には特に注意。皮膚掻痒で眠れない症状にいまだによく処方される。皮膚科専用。それ以外の処方はもうみない。薬物依存注意。(pfizer)














他にもたくさんありますが割愛。

【プランルカストPranlukast商品名オノンカプセル112.5mg®】

1960年代に抗原抗体反応により肺で産生される平滑筋収縮物質としてSRS-A(slow reacting substance of anaphylaxis)が発見される。肥満細胞から分泌され、平滑筋収縮を誘導し、喘息における主要な気管支収縮物質。その本体はロイコトリエンleukotrieneであることが見いだされた。*3つの共役二重結合(triene)をもつことから命名。膜リン脂質からアラキドン酸カスケードの5-リポキシゲナーゼ系で産生される代謝産物であり、気道収縮作用、血管透過性亢進作用、粘膜浮腫作用、粘液分泌亢進作用を有している。ロイコトリエンのうち、システイン残基をもつものをシステイニルロイコトリン(cysLTs)と呼ばれる。

気管支喘息は気道の慢性アレルギー性炎症病変で、気道過敏性の亢進→気道炎症→気道収縮を経て喘息発作が引き起こされる。ここで最重要であるのは、気道炎症が長期にわたると(慢性化)すると気道リモデリング(肥厚)が引き起こされ、気道易狭窄→気道過敏性のさらなる亢進→全般病態の悪化・慢性化が引き起こされることである。
表1 喘息診断の目安
(出典:日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会「喘息予防・管理ガイドライン2015」)

表2 喘息治療ステップ 治療ステップ3、4に「LAMA」チオトロピウムのレスピマット製剤が追加。
(出典:日本アレルギー学会 喘息ガイドライン専門部会「喘息予防・管理ガイドライン2015」)

抗ロイコトリエン薬は、この気道過敏性の亢進を是正し、喘息治療のすべてのステージで必要不可欠。現在では喘息病態のコントローラーとして吸入ステロイド薬とならんで欠かすことのできない薬剤となった。詳しくは喘息予防・管理ガイドライン2015を参照。

小野薬品工業㈱は1981年よりcysLTsの薬理作用に拮抗する化合物の合成を開始し、その中からプランルカスト水和物を選定。1986年から成人気管支喘息を対象とした臨床試験が行われ、発作のの軽減、ステロイド剤等の減量効果および肺機能の改善効果が明らかとなり、cysLTs受容体拮抗薬として世界で初めてその有用性が認められ1995年3月31日に「気管支喘息」の効能・効果で製造承認を取得。さらにドライシロップ製剤も追加され、喘息に苦しむ子供達にとっても救いの薬となった。

<今回は、アレルギー性鼻炎の治療薬としてのオノンカプセル®を>

アレルギー性鼻炎にはヒスタミンが関与することは古くから知られていたが、鼻閉には抗ヒスタミン薬が効きにくいことは当時から分かっていた。予想通り、鼻閉にはcycLTsが関与していて、アレルギー性鼻炎患者に抗原誘発を行うと、鼻汁中のLTC4、LTD4が著明に上昇することや、鼻粘膜血管透過性亢進、鼻粘膜浮腫、鼻腔通気抵抗上昇、鼻粘膜過敏性亢進等、アレルギー性鼻炎の基本的病態の形成にcysLTsが深く関与していることが明らかにされた。また抗原曝露による遅発相反応がアレルギー性鼻炎症状の慢性化、重症化に関与すること、さらに遅発相反応は主としてcysLTsによって惹起されることが明らかにされた。これらによりアレルギー性鼻炎の三大主徴である鼻閉、鼻汁、くしゃみに対する改善効果が確認され、特に既存薬では十分な効果が認められていなかった鼻閉に対する効果が明らかとなり、2000年1月18日に「アレルギー性鼻炎」の効能・効果が追加となり、現在では抗ヒスタミン薬(第2世代)、点鼻ステロイド薬等とならんで、アレルギー性鼻炎治療(特に鼻閉を主とする)に欠かすことのできない薬剤となった。
表1 各症状の程度 (2005年版鼻アレルギー診療ガイドラインによる)
表2 アレルギー性鼻炎症状の重症度と病型分類 (2005年版鼻アレルギー診療ガイドラインによる)
表3 重症度に応じた花粉症に対する治療法の選択 (2005年版鼻アレルギー診療ガイドライン)
(出典:鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版)(最新版)