Exercise & PGC-1α
残暑厳しい時節 雪山が恋しくなります |
(ミトコンドリア機能調節)シグナル伝達の下流中心に位置するPGC-1α
Bezafibrateベザフィブラート:PPARαの活性化薬としてすでに長年臨床応用されています
Resveratrolレスベラトロール:赤ワインポリフェノールとして数年前から脚光を浴びる健康食品成分で本来カロリー制限(カロリーリストリクション)で活性化するSirtuin-1(サーチュイン1)を活性化します。Sirtuin-1は別名 長寿遺伝子。
Mitochondrial gene transcription:ミトコンドリア遺伝子転写活性
Mitochondrial biogenesis:ミトコンドリア生合成
ROSはReactiveOxygenSpecies:いわゆる活性酸素です
でもExercise=運動でPGC-1αを活性化できるとより健康的で安心です。
<ミトコンドリア機能調節のキーとなるタンパク質:PGC-1α>
運動によってエネルギー代謝が改善するのは疑いようもない事実。直接的なエネルギー代謝のみでなく、運動によって筋肉細胞内代謝が改善することが報告されています。
登山をはじめとする有酸素運動とミトコンドリアが密接に関連していることを前回までにまとめてきましたが、このミトコンドリアの機能の調節のキーとなるのが今回ご紹介するPGC-1αです。筋繊維タイプの変換にも関わっています。
PGC-1α(peroxisome proliferator activator γ coactivator α)
転写コアクチベーター:遺伝子の転写を制御する物質
適切な有酸素運動を継続的に行うことにより、有酸素的代謝能の高い遅筋繊維の割合を増やすことができます(運動の慢性効果)。このいわゆる筋繊維転換は運動刺激によってさまざまなシグナルを介して(具体的にはカルシウムシグナル伝達系・エネルギー消費シグナル・メカニカルストレス・酸素分圧など)誘導されます。
これらの初期シグナルの下流でキーとして働いているのが【 PGC-1α 】です。
実際、PGC-1αが増えると遅筋繊維が増加(ミトコンドリアが増加)し、持久力も非常に高くなるとともに脂肪酸のβ酸化能力も高いために肥満にも耐性を示すようになります。
骨格筋の筋繊維タイプを適切な運動などで操作して代謝能の質を変化させることは、自分で自覚して行えるだけに 病気の予防や治療という臨床上でも非常に重要なターゲットとなってきそうです。
逆にPGC-1αが減少すると・・・肥満や糖尿病の原因にも。 PGC-1αの転写活性は、 Exercise(いわゆる運動)やCold exposure(寒冷刺激)、Fasting(絶食や飢餓)などで上昇 そのほかPolymorphisms(遺伝多型)などが関わります。人類の進化の過程そのもの。 |
AdiponectinアディポネクチンやMetforminメトホルミンも密接に関連しています |
☆【METGLUCOメトグルコ®錠】(Re.) Today’s medicine Vol.4
このエネルギー源として主に脂肪が使われます。
運動と運動以外の身体活動を生活活動代謝といいます。
食事誘導性熱産生は消化・吸収等の際に産生される熱量です。
基礎代謝は10代後半をピークに低下し、筋肉量が減り代謝活動が低下してくる40歳頃から さらに急激に落ちていく事が知られています。このためいわゆる中年肥満が起こります。 |
ミトコンドリアが心筋、肝臓、腎臓、尿細管細胞、脳神経細胞そして骨格筋(赤筋)に多く分布することと一致します。 ちなみに重量当たりの酸素消費量や熱産生量は圧倒的に心臓が大きいことが特徴です。 |
基礎代謝に占める骨格筋の割合は4割に満たないのですが、
意識的に自分の意思で(介入により)コントロールできるのは骨格筋のみ!
このため臨床でもダイエットでもこの骨格筋がとても重要視されています。
骨格筋だけは自発的な運動によってコントロールできる!ということなのです。
エネルギー摂取と消費バランスの崩れによるエネルギー過多の状態は、過剰な脂肪蓄積(肥満)を引き起こして いわゆる生活習慣病(2型糖尿病、脂質異常症、高血圧など)の大きな原因となっています。
現代人が抱えるこのエネルギー収支のバランスの崩れは、食生活の欧米化(動物性高脂肪・高タンパク食)に加え、社会全般のオートメーション化、自動車の普及などによる身体活動量の低下、すなわち「運動不足」が大きく関与しています。
骨格筋では、エネルギー源として主に糖と脂質が利用されますが、それらの代謝バランスは栄養状態や運動刺激に応じて巧妙に制御されています。
摂食栄養素が十分なときには主にグルコースを利用しますが、血中脂肪酸濃度が上昇する空腹(飢餓)時や適切な有酸素運動時では、 健康な骨格筋は脂質の代謝も亢進させます。
この骨格筋におけるグルコースから脂質の利用への適正なシフトは、脳などの他組織へのグルコース供給を保ち個体の生命維持に必須であるだけでなく、過剰な脂質を燃焼させて体脂肪量を減少させるという意味でも重要です。
許容範囲を超える大過剰の脂肪酸の取り込みなど、エネルギー収支バランスが崩れると骨格筋の細胞の中に過剰の脂質が蓄積するようになります。そうするとインスリンがうまく働かなくなるだけでなく、TNFやIL-6といった炎症を引き起こすいわゆる悪玉サイトカイン(ホルモン)が放出される原因となってしまうのです。今までがっしりとした筋肉だったところが脂肪に替わってきたりしてきていませんか?
補足ですが EPAなどの不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸によるこれらの悪影響に対して保護的な効果をもっています。 またPPARsのアゴニスト作用(核内転写因子を活性化する作用)ももっているので食事やサプリメントなどでしっかりと摂っていきたいものです。
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