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2009年8月 谷川岳にて |
前回は クライマーやアスリートとスポーツ遺伝子のお話をしましたが、
今回はそれと大いに関係のある筋肉の話をもう少し掘り下げたいと思います。

普段、トレーニングをかかさない方や山に行かれている方は、登山やクライミングでひどい「筋肉痛」はあまり起きません。ところが普段あまりトレーニングできない人が本格的な山行をすると数日間は、いやというほどひどい筋肉痛に悩まされます。これは筋が弱かったり少なかったりするためにたくさんの筋細胞が壊れた証拠です。
今回はそれと大いに関係のある筋肉の話をもう少し掘り下げたいと思います。

普段、トレーニングをかかさない方や山に行かれている方は、登山やクライミングでひどい「筋肉痛」はあまり起きません。ところが普段あまりトレーニングできない人が本格的な山行をすると数日間は、いやというほどひどい筋肉痛に悩まされます。これは筋が弱かったり少なかったりするためにたくさんの筋細胞が壊れた証拠です。
登りがつらい?下りがつらい?
一般的には、下りの方が楽というイメージかと思いますが、実は下りでも疲労は起こりますし、登りの疲労よりもより重大です。登山の事故の原因の中で、一番多いのは転落・滑落・転倒で全体の5割ぐらいを占めています。転落や滑落は、転んで二次的に起こることが多いので最大の事故原因は「転倒」といえます。そしてその転倒は、下りで起こる疲労が大きな原因なのです。
登りは自分の身体を上に持ち上げていくので位置エネルギーを大きくするために筋がエネルギーを使って仕事をしなければなりません。この必要なエネルギー、生みだすためには、たくさんの酸素がいります。ということは、肺や心臓に大きな負担がかかります。
一方、下りでは 位置エネルギーが解放されて運動エネルギーに変わります。
それをうまく利用すれば、下りにはエネルギーはあまりいりません。下りであまり息切れしませんよね?逆に【エネルギー保存の法則】から解放されたエネルギーをゼロですますわけにいきません。というわけで、下りでは適度なスピードで下るために筋力を発揮してブレーキをかける必要があります。といっても登りに比べれば、必要なエネルギーはずっと少なくてすみます。
ということは、
【登りでは、心肺系に大きな負担がかかるが、筋肉へのダメージはほとんどない】
【下りでは、心肺系への負担は小さいが、筋肉へのダメージが大きい】
ということになります。
心肺系にかかる負担は 動悸や息切れというかたちとなって
その場でただちに「つらさ」として大脳が情報を受け取ります。ですが筋肉が壊れたことはその場ではわかりません。
運動後、しばらくしてから「筋肉痛」という症状があらわれて あ~壊れたなあとわかるのです
筋が壊れると その老廃物(窒素化合物)を処理するために
心肺系にかかる負担は 動悸や息切れというかたちとなって

運動後、しばらくしてから「筋肉痛」という症状があらわれて あ~壊れたなあとわかるのです
筋が壊れると その老廃物(窒素化合物)を処理するために
腎臓に大きな負担をかけることになります。
山から帰ってきたら 足がパンパンにむくんで・・・なんてご経験ないですか?
腎臓に負担がかかっています。いたわってあげてください。
激しく筋が壊れるとCPK値1000オーバー!なんてざらにおこります。
こうなると健康にいいどころか逆にストレスになってしまいます。
登山に使う筋肉
そもそも登山やクライミングには、どんな筋肉が使われるの?ということなんですが
これは、たくさんありますが、中でも一番重要なのはやはり大腿四頭筋です。
【大腿四頭筋】
膝関節を伸展する筋肉。登山の主働筋。
段差の大きな登りとなるほど酷使され、また下りでは非常に大きな負担がかかります
【下腿三頭筋】(ヒラメ筋)
足関節を伸展する筋肉。
岩場や雪渓などで、つま先で立つような場合には、負担が増します。いわゆるヒラメ筋。
クライミング後はかなり痛くなります。遅筋の代表格。
ミトコントリア密度と活性が高いので、脂肪酸のβ酸化能力が高い
【下腿三頭筋】(腓腹筋)
大腿骨に付着して、アキレス腱として踵に付着します。2関節にまたがった筋肉です。
非常に力が強く、速筋の代表格
足関節の底屈と膝関節の屈曲を荷っています
有酸素運動で、遅筋繊維の割合が増えると言われています。
無酸素系から有酸素系へ!筋肉は変わる!
【内転筋群】
ここもミトコントリア密度と活性が高いので、脂肪酸のβ酸化能力が高く、働きもの
長内転筋が有名
【前頸骨筋】
足先を持ち上げてつまづないようにする筋肉
足関節の背屈では、最強の筋肉!目で見てすぐわかります ここも翌日かなり痛くなります
【脊柱起立筋】
姿勢を維持します。特に下りで負担が増します。インナーマッスルの代表格。
電車通勤などで、立っていると小刻みにゆられて自然に鍛えられてます
遅筋繊維でできた筋肉の代表格でもあります。いわゆる赤筋(赤身)
ミトコンドリアが多いというか、ミトコンドリアのかたまり。
【腹筋群】
姿勢を維持します。特に登りで負担が増します。
腹直筋や腹斜筋は、アウターマッスルの代表格。
【大胸筋】
背中のザックを、肩を使って前方にひきつけます。
弱いとザックが後ろにひかれて、背骨に負担がかかります。
【僧帽筋】
ザックによる下方への引きに対して、肩を上に持ち上げて支持します。
弱いとザックが、下に引かれ、背骨に負担がかかります。
【殿筋群とハムストリングス】
股関節を伸展する
【腸腰筋】
とても重要なインナーマッスル。股関節を屈曲させる働きを担う。
登山の主働筋の大腿四頭筋は、
登るときには、長さが縮みながら力を発揮し(短縮性収縮)、
下るときには引き伸ばされながら(伸張性収縮)、力を発揮します。
短縮性収縮は、筋にとって自然な収縮様式ですが、
伸張性収縮は、不自然な収縮様式。伸びながら縮むとは?!
この伸張性収縮の繰り返しが 大腿四頭筋の負荷となり急激な筋力の低下を招くことになります。また下りの着地衝撃は、登りの2倍になります!つまり体重の2倍の大きな力が、着地した瞬間に一気にかかっています。さらに自分の体重の3分の1近くもあるザックを背負っていれば、なおさらですね。こうして下りでは、筋力が大きく低下し、さらには強い着地衝撃との相乗作用によって、体重を支え切れなくなり、転倒が起きやすくなってしまうんです。
そこで、下りの筋肉疲労を防ぐには?
ポイントは大きく分けて2つ。
① 技術の改善
大腿四頭筋にストレスをかけないような歩き方をする
② 体力の改善
トレーニングして大きなストレスにも耐えられるよう強化するの2点です
大腿四頭筋は、平地を歩いたり走ったりする時にはあまり使われません。
ですが、坂道を登る場合には著しく貢献度が増します。
平地の持久走は得意だけれど、登山はどうも・・・という方は、この筋が弱いのかもしれません。また登りだけでなく、下りでも、着地衝撃に耐えて、体重を支持する!という大切な働きをしています。
大腿四頭筋は、トレーニングで強化すれば、疲労せず歩けるようになります。
そればかりでなく、バランスの能力が向上したり、バランスを崩したときにもとっさに体勢を立て直せるようになります。危険回避能力アップ⤴
さらに、痙攣や筋肉痛が起こりにくくなるなど、トレーニングの大切さは計り知れません。また大腿四頭筋を強化すると、膝関節を保護する能力が高まるので膝関節痛の予防・改善にも効果があります。
大腿四頭筋を鍛える代表的なトレーニングは、ヒンズースクワットです。
膝関節の角度は90度で十分!つま先と膝の向きを一致させ、
膝を内側に絞らないようにするのが大事!いわゆる内転しないようにしましょう。
また、しゃがんだときに、膝が前にですぎないようにすることも大事。
できれば、つま先よりも前に出ないように!
筋力が向上してくれば、いろんなバリエーションができるように。
例えば、適当な重さのザックを背負って行ったりするとより効果的です。
技術の改善にしても体力の改善にしても、
実際に山に行く、岩に行くのが、一番です。
自分の目下の課題は、体力を徐々にもどすのとザックの軽量化です。
次回、大腿四頭筋以外の筋肉や乳酸のお話ができれば、と思います。
登山~クライミング~ は理想的な有酸素運動! Vol.1
登山~クライミング~ は理想的な有酸素運動! Vol.2
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です! VOL.3. 山で使う筋肉の話
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.4 「 LT レベルを守る 」

登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.5 「 LT レベルをヤマに活かす① 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.6 「 LT レベルをヤマに活かす② 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.7 「 LT レベルをヤマに活かす③ 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.8 EXERCISE & PGC-1α
山から帰ってきたら 足がパンパンにむくんで・・・なんてご経験ないですか?
腎臓に負担がかかっています。いたわってあげてください。
激しく筋が壊れるとCPK値1000オーバー!なんてざらにおこります。
こうなると健康にいいどころか逆にストレスになってしまいます。
登山に使う筋肉
そもそも登山やクライミングには、どんな筋肉が使われるの?ということなんですが
これは、たくさんありますが、中でも一番重要なのはやはり大腿四頭筋です。
【大腿四頭筋】
膝関節を伸展する筋肉。登山の主働筋。
段差の大きな登りとなるほど酷使され、また下りでは非常に大きな負担がかかります
【下腿三頭筋】(ヒラメ筋)
足関節を伸展する筋肉。
岩場や雪渓などで、つま先で立つような場合には、負担が増します。いわゆるヒラメ筋。
クライミング後はかなり痛くなります。遅筋の代表格。
ミトコントリア密度と活性が高いので、脂肪酸のβ酸化能力が高い
【下腿三頭筋】(腓腹筋)
大腿骨に付着して、アキレス腱として踵に付着します。2関節にまたがった筋肉です。
非常に力が強く、速筋の代表格
足関節の底屈と膝関節の屈曲を荷っています
有酸素運動で、遅筋繊維の割合が増えると言われています。
無酸素系から有酸素系へ!筋肉は変わる!
【内転筋群】
ここもミトコントリア密度と活性が高いので、脂肪酸のβ酸化能力が高く、働きもの
長内転筋が有名
【前頸骨筋】
足先を持ち上げてつまづないようにする筋肉
足関節の背屈では、最強の筋肉!目で見てすぐわかります ここも翌日かなり痛くなります
【脊柱起立筋】
姿勢を維持します。特に下りで負担が増します。インナーマッスルの代表格。
電車通勤などで、立っていると小刻みにゆられて自然に鍛えられてます
遅筋繊維でできた筋肉の代表格でもあります。いわゆる赤筋(赤身)
ミトコンドリアが多いというか、ミトコンドリアのかたまり。
【腹筋群】
姿勢を維持します。特に登りで負担が増します。
腹直筋や腹斜筋は、アウターマッスルの代表格。
【大胸筋】
背中のザックを、肩を使って前方にひきつけます。
弱いとザックが後ろにひかれて、背骨に負担がかかります。
【僧帽筋】
ザックによる下方への引きに対して、肩を上に持ち上げて支持します。
弱いとザックが、下に引かれ、背骨に負担がかかります。
【殿筋群とハムストリングス】
股関節を伸展する
【腸腰筋】
とても重要なインナーマッスル。股関節を屈曲させる働きを担う。
登山の主働筋の大腿四頭筋は、
登るときには、長さが縮みながら力を発揮し(短縮性収縮)、
下るときには引き伸ばされながら(伸張性収縮)、力を発揮します。
短縮性収縮は、筋にとって自然な収縮様式ですが、
伸張性収縮は、不自然な収縮様式。伸びながら縮むとは?!
この伸張性収縮の繰り返しが 大腿四頭筋の負荷となり急激な筋力の低下を招くことになります。また下りの着地衝撃は、登りの2倍になります!つまり体重の2倍の大きな力が、着地した瞬間に一気にかかっています。さらに自分の体重の3分の1近くもあるザックを背負っていれば、なおさらですね。こうして下りでは、筋力が大きく低下し、さらには強い着地衝撃との相乗作用によって、体重を支え切れなくなり、転倒が起きやすくなってしまうんです。
ポイントは大きく分けて2つ。
① 技術の改善
大腿四頭筋にストレスをかけないような歩き方をする
② 体力の改善
トレーニングして大きなストレスにも耐えられるよう強化するの2点です
大腿四頭筋は、平地を歩いたり走ったりする時にはあまり使われません。
ですが、坂道を登る場合には著しく貢献度が増します。
平地の持久走は得意だけれど、登山はどうも・・・という方は、この筋が弱いのかもしれません。また登りだけでなく、下りでも、着地衝撃に耐えて、体重を支持する!という大切な働きをしています。
大腿四頭筋は、トレーニングで強化すれば、疲労せず歩けるようになります。
そればかりでなく、バランスの能力が向上したり、バランスを崩したときにもとっさに体勢を立て直せるようになります。危険回避能力アップ⤴
さらに、痙攣や筋肉痛が起こりにくくなるなど、トレーニングの大切さは計り知れません。また大腿四頭筋を強化すると、膝関節を保護する能力が高まるので膝関節痛の予防・改善にも効果があります。
大腿四頭筋を鍛える代表的なトレーニングは、ヒンズースクワットです。
膝関節の角度は90度で十分!つま先と膝の向きを一致させ、
膝を内側に絞らないようにするのが大事!いわゆる内転しないようにしましょう。
また、しゃがんだときに、膝が前にですぎないようにすることも大事。
できれば、つま先よりも前に出ないように!
筋力が向上してくれば、いろんなバリエーションができるように。
例えば、適当な重さのザックを背負って行ったりするとより効果的です。
技術の改善にしても体力の改善にしても、
実際に山に行く、岩に行くのが、一番です。
自分の目下の課題は、体力を徐々にもどすのとザックの軽量化です。
次回、大腿四頭筋以外の筋肉や乳酸のお話ができれば、と思います。
登山~クライミング~ は理想的な有酸素運動! Vol.1
登山~クライミング~ は理想的な有酸素運動! Vol.2
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です! VOL.3. 山で使う筋肉の話
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.4 「 LT レベルを守る 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.6 「 LT レベルをヤマに活かす② 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.7 「 LT レベルをヤマに活かす③ 」
登山CLIMBINGは理想的な有酸素運動です!VOL.8 EXERCISE & PGC-1α