Kanpo【麻黄湯】【葛根湯】【柴胡桂枝湯】風邪に効く漢方② オススメ 漢方薬Vol.5


ずいぶん冷え込んできました。  
今晩は、関東の平野部でも今シーズン初めての雪のようです。これだけ寒くなってくるといよいよ風邪のシーズンも本番!普段の体調管理をこころがけたいものです。
ただ注意していてもひいてしまうのが風邪。  
オススメ 漢方薬! Vol.4 風邪のひきはじめに効く漢方 二日酔いにも に続いて  

今回はしっかりと風邪をひいてしまったらのみたい漢方薬のご紹介です。

「麻黄湯」

まずはどんな風邪にも→「麻黄湯」
インフルエンザに効く漢方!でご紹介したあの「麻黄湯」です。実は、どんな風邪にも効きます。

一番向くのは、がっちりタイプの大人の方(普段比較的元気で体力のある方)や普段元気な子供さん。

熱が出始めて寒気でぞくぞくしているときに飲み始めるのがオススメ。

数時間毎にお湯に溶かしてのみます。
大人なら1日6回ぐらいのめます。
いつまでのむかというと汗が出始めるまで!
汗をかきすぎるまでのみつづけないようにしましょう。

キーワードは「頭痛」「発熱」「寒気」に加えて「汗がない」という点は、あとでお話しする「葛根湯」と同じです。違いは 「関節痛」「筋肉痛」あるいは「咳」です。


構成生薬は【麻黄】【桂皮】【甘草】【杏仁】の4種類。

【杏仁】以外はすでに「麻黄附子細辛湯」と「小青竜湯」のところでご紹介しました。

杏仁キョウニン
【杏仁】キョウニン
杏アンズの種子の中にある仁サネを取り出したもの。杏仁豆腐でおなじみ。 

麻黄と組んで用いられ、鎮咳・去痰・利尿等の作用があります。
「アーモンド」は杏仁の漢訳語。アーモンドとアンズは植物としては近縁種です。

「 柴胡桂枝湯 」 

「麻黄湯」でしっかりと汗が出始めたらつづけて飲んでいただきたいのが「 柴胡桂枝湯 」 です。

子供さんの場合は、「麻黄湯」でしっかり汗をかいて、一晩寝ればもう元気!という場合が多いですが、大人の方は、麻黄湯で汗がしっかりかけたら、この「柴胡桂枝湯」でアフターケア。

PL顆粒や売薬の総合感冒薬などをのんで数日経って治らないときにもオススメ!

個人的には、好みの漢方の一つです。結構、なんにでも効くので風邪以外でもなんとなく体調よくないなあ・・・というときは、とりあえずのんでみるっていうのもOKです。


構成生薬は少し多めの9種類

【柴胡】【半夏】【黄芩】【甘草】【桂皮】【芍薬】【大棗】【人参】【生姜】
ミシマサイコ
【柴胡】サイコ
セリ科の多年草。その根が用いられています。解毒、解熱、鎮静、鎮咳、抗アレルギー作用などなど「柴」の字を含む漢方や「加味逍遥散」や「補中益気湯」など有名どころに入っています。

困ったら「五苓散」と並んで困ったら「柴胡桂枝湯」。
ちなみに「柴胡桂枝湯」は、「小柴胡湯」プラス「桂枝湯」です。
「小柴胡湯」も風邪におすすめですが、紙面の都合で、また別の機会に。

オウゴン
【黄芩】オウゴン
シソ科タツナミソウ属の多年草。コガネバナ(黄金花)の根を乾燥したもの。
徳川吉宗の頃、小石川養生所(現・東京大学小石川植物園)で栽培されたのが、

日本での栽培の最初とされていますいわゆる柴胡剤は「柴胡」とこの「黄芩」を含みます。炎症・充血を改善、鎮痛、鎮静、抗アレルギー作用など効果はさまざま。
ナツメ
【大棗】タイソウ
いわゆるナツメ。ナツメまたはその近縁植物の実を乾燥したもの。ちなみに種子は酸棗仁(さんそうにん)。甘味があり、強壮作用・鎮静作用、補性作用・降性作用もあります。

生姜(しょうきょう)との組み合わせで、副作用の緩和などを目的に多数の漢方方剤に配合されています。「葛根湯」「六君子湯」「甘麦大棗湯」などが有名です。


ニンジン
【人参】ニンジン
御種人蔘オタネニンジンの根。
ジンセノサイドというサポニンが有効成分の一つ。

「御種人蔘」の名は、これも徳川吉宗が対馬藩に命じて朝鮮半島で種と苗を入手させ、試植の後各地の大名に「御種」を分け与えて栽培を奨励したことに由来するといわれています。滋養強壮はもちろん、健胃、抗ストレスなど効果はさまざま他の漢方の薬効を強める働きがあるといわれ多くの漢方剤に入っています。

③「葛根湯」
つづいては、おなじみのカゼに漢方の「葛根湯」です。
「麻黄湯」ほどではないけれど普段、ふつうに元気のあるヒトの風邪向け。服用にあたってのキーワードは「頭痛」「発熱」「寒気」に加えて「汗がでそうにない」という点では、「麻黄湯」と同じ。

違いは「首の後ろがこる」「背中のこわばり」など。
これも風邪だけじゃなく、いろいろと効きます。

昔から様々な急性疾患に用いられており、
平安時代の清少納言も「葛根湯」をのんでいたそうです。歴史だなあとしみじみ。

構成生薬は7種類

【葛根】【大棗】【麻黄】【甘草】【桂皮】【芍薬】【生姜】

もうおなじみの生薬たち。ご紹介していないのは、【葛根】のみ。

クズ
【葛根】カッコン
くず餅や葛湯、葛切りなどで有名なりクズの根。
発汗作用・鎮痛作用があるとされ、「葛根湯」「参蘇飲」などに含まれます。


④「麻黄附子細辛湯」
前回、風邪ひいたかなあ?でのむ漢方でご紹介しました。今回は、風邪をひいてしまった普段ちょっと弱々しい方や普段比較的元気なお年寄り向けとして「麻黄附子細辛湯」をご紹介。弱々しいタイプの方やお年寄りに、「麻黄湯」や「葛根湯」だと汗がですぎてしまうことがあります。後でぐったりということもあるのでこちらがおすすめ。

構成生薬などは、前回のオススメ 漢方薬! Vol.4 冬本番!風邪のひきはじめに効く漢方!
をご覧ください。


⑤「香蘇散」
虚弱な方向けの風邪の漢方。これまでご紹介した中で、最も虚弱な方向け!妊娠時の風邪の漢方としてよく使われます。これも「葛根湯」と同じく万能薬。

構成生薬は5種類【香附子】【蘇葉】【陳皮】【甘草】【生姜】
ハマスゲ
【香附子】コウブシ
ハマスゲの根茎を掘り取って乾燥させたもの。芳香性健胃、浄血、通経、鎮痙などの効能があります。薬効成分としては精油を含み、これにはα-キペロン、キペロール、インキペロール、キペレンなどが含まれます。「女神散」の構成生薬として有名。
ソヨウ
【蘇葉】ソヨウ
アカジソ 。文字通り、赤紫蘇アカジソの葉。理気作用(気のめぐりを改善する)があり、発汗・鎮静・鎮咳・利尿など作用はさまざま。魚や蟹などによる中毒症状にも効き、お刺身にもたいがい添えられています。シソの葉はロズマリン酸、葉と実にはルテオリン(フラボノイド)という成分を含み、抗アレルギー作用があり、最近では、花粉症の方にもオススメされています。「蘇葉」は「香蘇散」の名の由来で、「参蘇飲」「半夏厚朴湯」などにも含まれています。
陳皮
【陳皮】
以前「六君子湯」の構成生薬としてちらっとご紹介しました。
温州みかんの成熟した果皮。主成分はヘプタメトキシフラボン(フラボノイド)
食欲不振・健胃・鎮咳・鎮嘔など消化器の諸症状に効きます。
「六君子湯」のサイエンスはとても興味深いのですが、これはまたの機会に。

以上今回ご紹介した風邪の漢方をまとめると

①麻黄湯→ふだん比較的体力のある方や元気な子供さん向け


②柴胡桂枝湯→麻黄や葛根湯で汗がではじめたらのむアフターケア用


③葛根湯→中間タイプの方向け


④麻黄附子細辛湯→比較的ふだん虚弱な方や元気なお年寄り向け


⑤香蘇散→虚弱な方やお年寄り向け


いろいろ試しながら、使い分けていけるのも漢方の魅力です!

ぜひ参考にしていただいて風邪に備えていただけると幸いです。

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オススメ!漢方薬vol.3 筋肉のけいれんや急激な痛みに【芍薬甘草湯】

オススメ 漢方薬! Vol.4 冬本番!風邪のひきはじめに効く漢方! 二日酔いにもよく効きます!!

★ご注意:以上の記述は、あくまで一個人の意見ですので、薬の効果や病気の治癒等を保証するものではありません。実際のお薬等の服用にあたっては、注意書きをよく読み、ご自身の判断・責任で、お試しください。よろしくお願い申し上げます