☆【Daklinza・Sunvepra ダクルインザ®錠・スンベプラ®カプセル 】 Today's medicine Vol.2

2015年5月27日 第2回



抗ウイルス薬
ダクラタスビル塩酸塩(商品名ダクルインザ錠60mg)・
アスナプレビル(商品名スンベプラカプセル100mg)


ブリストル・マイヤーズは2015年3月20日
経口抗ウイルス薬のダクラタスビル(商品名ダクルインザ)と
アスナプレビル(スンベプラ)の適応拡大が認められたと発表

追加された適応は
「C型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変でインターフェロン(IFN)を含む
治療法に適格の未治療患者および前治療再燃患者」

この適応追加により、IFNの治療歴の有無にかかわらず、
全てのジェノタイプ1のC型慢性肝炎およびC型代償性肝硬変で
IFNを使わない「IFNフリー」の治療が可能に


【新適応(効能又は効果)】
セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変における
ウイルス血症の改善


【用法及び用量】
成人にダクラタスビル1回60mgを1日1回、アスナプレビル1回100mgを1日2回、
両薬剤を併用で24週間経口投与する。

旧適応はこちら↓
2014年年9月に発売時の適応
「ジェノタイプ1のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変で、
(1)IFNを含む治療法に不適格の未治療あるいは不耐容の患者、
(2)IFNを含む治療法で無効となった患者」
高齢だったり、副作用に耐えられないなどの理由でIFNを使えない患者や、
過去に使って効果がなかった患者でのみ、IFNフリーの治療が可能だった。
今回の適応追加で、IFNを使える患者も経口薬2剤で治療できるようになる。

※「serotype(血清型)」
現在 C型肝炎ウイルス(HCV)に感染している患者は世界で1億7000万人
日本では約120万人いると推定されている。日本のC型肝炎患者の約70%が
既存の治療法では効果が得られにくいジェノタイプ1bのHCVに感染していることが判明している
また多くは65歳以上であり合併症を有しているため、現在の中心的治療法である
インターフェロン(IFN)を含む治療が困難、または忍容性が低いことが問題となっていた


ダクラタスビル(DCV)アスナプレビル(ASV)は共にHCVに対して抗ウイルス作用を有する
低分子の直接作用型抗ウイルス薬(Direct acting Antiviral Agents:DAAs)


DCVは、HCVの複製や細胞内シグナル伝達経路の調節に関与する
非構造蛋白質5A(NS5A)を阻害することで抗ウイルス作用を発揮する、
世界初のHCV NS5A複製複合体阻害薬



ASVは、NS5Aと同様HCVの複製に必須の
非構造蛋白質3/4A(NS3/4A)プロテアーゼを阻害することで
抗ウイルス作用を発揮するNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬

NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬には、第一世代のテラプレビル(商品名テラビック)と、
2013年12月に発売された第二世代のシメプレビル(商品名ソブリアード)がある
ASVは、シメプレビルと同じ第二世代に位置づけられている


2014年承認されたDCV/ASV併用療法は、IFNを使用せず経口薬のみで
C型肝炎を治療する日本初の治療法

DCV/ASV併用による国内第3相臨床試験では、ジェノタイプ1bのC型慢性肝炎患者または
C型代償性肝硬変患者において、優れた有効性が確認された。
なお、併用による拮抗作用、細胞毒性の著明な増強、および交差耐性は認められていない

難治性のジェノタイプ1bのC型肝炎で、IFNを含む治療法に適格の未治療患者を対象とした
第3相試験では、2剤を24週間投与することで、89.1%(106/119)が12週にわたって
HCV-RNAが陰性の状態を持続した(SVR[sustained virological response]
IFNを含む治療法に適格の前治療再燃患者では、95.5%(21/22)がSVR12を達成した。
全体では90.1%(127/141)がSVR12を達成した。



発売時の適応は、「ジェノタイプ1のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変で、
(1)IFNを含む治療法に不適格の未治療あるいは不耐容の患者
(2)IFNを含む治療法で無効となった患者」。
高齢だったり、副作用に耐えられないなどの理由でIFNを使えない患者や
過去に使って効果がなかった患者でのみIFNフリーの治療が可能だった。
今回の適応追加で、IFNを使える患者も経口薬2剤で治療できるようになる
【留意点】

ダクラタスビルとアスナプレビルの併用療法では、著効が得られなかった場合にHCVが
多剤耐性を獲得する可能性が指摘されている。
ダクラタスビルとアスナプレビルの第3相試験では、
ウイルスのNS5A領域にY93Hの置換があった患者に限ると、
SVR24の達成率は35.4%(17/48)だった。
L31I/M/Vの置換がある患者に限ったSVR24の達成率は42.9%(6/14)
このため、日本肝臓学会の「C型肝炎治療ガイドライン」(第3.2版)では、
「現時点で保険適用はないものの、ダクラタスビル/アスナプレビル治療前には極力、
Y93/L31変異を測定し、変異があれば原則としてダクラタスビル/アスナプレビル併用は
選択肢としない」としている



経口薬2剤による治療では、IFNの副作用を避けられる一方で、
ウイルスの多剤耐性獲得が問題となる。適応拡大により処方対象となる患者が増えたことで、
適切な適応を判断することが、これまで以上に重要になってくる

※治療効果は血液検査にてHCV-RNA量を測定して評価し、
治療終了後6ヶ月の時点までHCV-RNA陰性が持続している状態を
「ウイルス学的著効 (SVR; sustained virological response)」と言う。

薬剤使用に際しては承認時までの国内臨床試験から、62.0%に副作用が認められていることに十分注意する必要がある。主な副作用は、ALT増加(17.6%)、AST増加(14.1%)、頭痛(12.9%)、発熱(11.8%)など。重大な副作用はALT増加(8.2%)、AST増加(5.9%)、血中ビリルビン増加(0.8%)の肝機能障害が報告されている。





以下は関連記事

「NS5Bポリメラーゼ阻害薬ソホスブビルが製造販売承認を取得
ジェノタイプ2のC型肝炎でもIFNフリーの治療が可能に」
2015/3/28 二羽 はるな氏=日経メディカル

ギリアド・サイエンシズは3月26日、経口抗ウイルス薬ソホスブビル(商品名ソバルディ)の製造販売承認を取得したと発表した。ジェノタイプ2のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変に対し、リバビリン(コペガス)と12週間併用する。今後、薬価基準への収載を経て発売される。ジェノタイプ2の患者に対しては従来、インターフェロン(IFN)による治療が行われており、経口薬のみの治療法は我が国初となる。

ソバルディはC型肝炎ウイルス(HCV)の増殖に関わるNS5Bポリメラーゼを阻害する作用を持つ。ジェノタイプ2の未治療または治療歴のある患者を対象とした第3相試験では、ソホスブビルとリバビリンの2剤を12週間投与した結果、96.4%(135/140)が12週にわたってHCV-RNAが陰性の状態を持続した(SVR[sustained virological response]12)。主な副作用としては、貧血(11.4%)、頭痛(5.0%)、倦怠感(4.3%)などが報告された。

我が国のC型慢性肝炎患者のうち、2~3割はジェノタイプ2とされる。ジェノタイプ2の患者に対しては従来、IFNによる治療が行われてきた。日本肝臓学会の「C型肝炎治療ガイドライン」(第3.2版)では、ジェノタイプ2で高ウイルス量の未治療患者に対してはPEG-IFNまたはIFNβとリバビリンの併用、低ウイルス量の未治療患者に対してはPEG-IFNまたは従来型IFNの単独投与を推奨している。これらの治療は、24~48週にわたって行われる。

だが、年齢や、副作用に耐えられない、週1回の通院が困難といった理由で、IFNを使えない患者が少なからずいた。ソホスブビルとリバビリンの併用は、こうした患者でも選択肢となり、治療期間は12週間に短縮できる。

現時点で、ソホスブビルとの併用の適応があるリバビリンは、中外製薬が製造販売するコペガスのみ。MSDが製造販売するレベトールについては「今年1月末に承認申請した」(MSD)という。

なお、ギリアド・サイエンシズは昨年9月、難治性であるジェノタイプ1のC型慢性肝炎を対象に、今回承認されたソホスブビルとNS5A領域阻害薬のレジパスビルの配合剤の製造販売承認を申請している。第3相試験では、ソホスブビルとレジパスビルを12週投与することで、100%(171/171)がSVR12を達成した。


アミオダロンとの併用で深刻な徐脈の報告

米食品医薬品局(FDA)は3月24日、抗不整脈薬のアミオダロン(アンカロン他)をソホスブビル、ソホスブビル/レジパスビル配合剤と併用すると、深刻な徐脈を生じることがあると警告し、2剤の添付文書に症候性徐脈に関する情報を追加した。FDAはソホスブビルと他の直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)の組み合わせや、ソホスブビル/レジパスビル配合剤を処方する際は、アミオダロンを併用すべきでないと推奨した。
FDAの資料によると、ソホスブビルとダクラタスビル(ダクルインザ)、シメプレビル(ソブリアード)の組み合わせや、ソホスブビル/レジパスビル配合剤をアミオダロンと併用した9人で、症候性徐脈が報告された。このうち7人はβブロッカーも服用していた。9人中1人が心停止のため死亡し、3人がペースメーカーを植え込みされた。
9人のうち6人はソホスブビルを含む治療を始めて24時間以内に症候性徐脈を発症していた。残りの3人は治療開始2~12日以内に発症していた。このためFDAは、アミオダロンを服用中にソホスブビルを含む治療を始める場合、患者を入院させ、最初の48時間は心モニタリングを行うことを推奨した。さらに、治療開始3日目以降、少なくとも2週間までは、外来を受診させるか患者本人による心拍数のモニタリングを勧めている。






抗ウイルス療法まとめ(Wikipedia)
抗ウイルス治療はC型肝炎ウイルスを排除する治療。一般的にインターフェロン療法を基本として行われ、治療方法はウイルスの「serotype(血清型)」によって選択される。治療効果は血液検査にてHCV-RNA量を測定して評価し、治療終了後6ヶ月の時点までHCV-RNA陰性が持続している状態を「ウイルス学的著効 (SVR; sustained virological response)」
①インターフェロン治療(IFN)
インターフェロン (IFNα) を基本とし、IFNα単独療法から、IFNα2b(イントロンA®)+Ribavirin(リバビリン)併用療法が開発され発展してきた。現在は以下のポリエチレングリコールを付加し体内停滞時間を持続させたペグインターフェロン (PEG-IFNα)+リバビリンの併用療法が行われる。基本は24週間の投薬で、治癒が見られない場合は更に24週間の計48週間の投薬治療が行われる。
PEG-IFNα2a(ペガシス® Pegasys)+Ribavirin(コペガス® Copegus)
PEG-IFNα2b(ペグイントロン® Pegintron)+Ribavirin(レベトール® Rebetol)
また以下のIFNを用いることもある。
IFNα(オーアイエフ® OIF)
IFNα(スミフェロン® Sumiferon):肝硬変進行例でも適応
IFNβ(フェロン® Feron):肝硬変進行例でも適応
Consensus-IFNα・IFNαcon1(アドバフェロン® Advaferon)

②直接作用型抗ウイルス薬(Direct acting Antiviral Agents:DAAs)
難治性の遺伝子型1b型高ウイルス量症例に対して、
以下の直接作用型抗ウイルス薬(Direct acting Antiviral Agents:DAAs)が開発され併用されている。
PEG-IFNα+Ribavirin+DAAsの3剤併用療法、またはDAAs×2剤併用療法が行われている。
ただDAAsのみの場合はインターフェロンと異なり薬剤耐性の問題があり、選択は慎重に検討される。
ギリアド・サイエンシズ社が開発したソホスブビル(2013年、FDAから承認)は経口のC型肝炎治療薬であり、
一錠1000ドルと高額なものの売れ行きを伸ばしている。その後同社が開発したソホスブビルとレディパスビルの合剤はSVR 98-99%であった。この合剤は「ハーボニ Harvoni」の名でFDAから2014年10月に承認されている。
ただし、一日一錠で12週間投与すると薬価が9万4500ドルとソホスブビル以上に高価なのが問題となっている。
2015年3月現在、日本ではソホスブビル単剤が承認されたが合剤は未承認である。
アッヴィ(米)のオムビタスビル、パリタブレビル、リトナビルの三種のカクテル(朝服用)とダサブビル(夜服用)を組み合わせた処方箋が「ヴィキラ・パック Viekira Pak」の名でハーボニの承認直後の2014年12月にFDAから承認されている。この「ヴィキラ・パック」も治癒率は90%以上だが、薬価は12週間で8万3319ドルと、ハーボニより少し低く設定されている。こちらも2015年現在日本では未承認である。
NS3/4A(プロテアーゼ阻害薬)
ボセプレビル Boceprevir(ビクトレリス® Victrelis)未承認
テラプレビル Telaprevir:TVR(VX-950 テラビック® Telavic)
シメプレビル Simeprevir(TMC-435 ソブリアード® Sovriad)
ファルダプレビル Faldaprevir(BI 201335)
バニプレビル Vaniprevir(MK-7009)
アスナプレビル asunaprevir(BMS-650032 スンベプラ® Sunvepra)
NS5A阻害薬
ダクラタスビル Daclatasvir(BMS-790052 ダクルインザ® Daklinza)
レディパスビル ledipasvir(GS-5885)
NS5B(ポリメラーゼ阻害薬)
ソホスブビル Sofosbuvir(GS-7977 ソバルディ)

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