☆【CRESTORクレストール®錠】 Rosuvastatin,スタチン・ランキング Today's medicine Vol.3

薬剤師の視点で臨床現場でキーとなる薬剤を紹介していきます

2015年6月11日 第3回
2015年12月23日 更新

【ロスバスタチンRosuvastatin商品名クレストール®CRESTOR 】 

言わずと知れた 水溶性ストロング・スタチンといえば!のスタチン
脂溶性ストロング・スタチンの代表であるリピトール®(アトルバスタチン)と双璧

クレストールの紹介の前にスタチン・ランキング。

Ranking of Statins 
スタチン・ランキング(あくまで個人の意見です)

1位 クレストール®(AstraZeneca&塩野義) ロスバスタチン 
トータルバランスが圧倒的 ”THE Benefit>>>>>Risk” 詳しくは本文で。

2位 リピトール®(Pfizer) アトルバスタチン 
P社の販売力で もう売れすぎた。インスリン抵抗性up⤴ のリスクは常に念頭におくべし。同じ脂溶性・活性型のリバロに対して代謝物にも活性がある点でも勝る。
3位 ローコール®(NOVARTIS) フルバスタチン 
なぜか不憫で哀愁のただようスタチン。肝排泄型&抗酸化作用がありHCVにもリバビリン等と併用実績。分かり易すぎるネーミング。N社だったのが最大の悲劇

4位 リバロ®(興和創薬) ピタバスタチン 
これといった特色なし。CYP系相互作用が少ないのは魅力だが別にそれであえて使われる理由にはならない。光に不安定&苦い。実は日産化学製。クレストール、リピトールに飽きたらお口直しにどうぞ。 
                         
5位 メバロチン®(第一三共) プラバスタチン 
これぞ日本が誇るブロックバスター。これなくしてスタチンは語れない。瀕死の三共を救った起死回生の一打。品川の研究所(通称:メバロチン御殿)は有名。水溶性&安価で超安全。ご家庭の常備薬にどうぞ(ただし妊婦さんには禁忌)。残念ながらTGは下げてくれない。

6位 リポバス®(MSD) シンバスタチン 
もう何年も前に役割を終えた。 いつ販売中止になっても誰も困らない。


 


Statins mechanism of action for patients with ligh LDL





【ロスバスタチンRosuvastatin商品名クレストール®CRESTOR 】

【JUPITER STUDY】
Rosuvastatin to Prevent Vascular Events in Men and Women  with Elevated C-Reactive Protein (N. Engl. J. Med. November 20, 2008)   
クレストール®を語るときSATURN試験と並んで外せない試験
ジュピター (Jupiter) は、ローマ神話に登場する気象現象を司る神ユーピテルの英語名;木星 
これに対してサターン (Saturn)は、ローマ神話のサートゥルヌスの英語名;土星。 

LDLは130mg/dL以下だが、高感度CRPが高値(>2.0mg/dL)を示す患者に対して、
クレストール®20mgもしくはプラセボを与えたスタディ。 クレストール®投与群の方が、心血管イベントが少なかった。注目すべきはLDL値に関係なくクレストールが心血管イベントの発生率を低下させたこと。

JUPITERのサブ解析ではクレストールは静脈血栓の発生率も低下させている。心血管リスクの高い患者にはLDL値にかかわらずクレストールをはじめとする。スタチンを投与すべきであることが示唆されたエポック・メイキングなスタディ 。これらの解析から ロスバスタチンによるLDL-C低下とCRP低下のメカニズムはそれぞれ異なるとする仮説が支持され→スタチンによるCVDイベントの抑制は、LDL-C低下とCRP低下の両方が関与していると信じられるようになり、さらには LDL-C低下とCRP低下がそれぞれ独立して臨床有効性に寄与することが示唆された。  

これらのことが、その後のスタチンの多面的作用(Pleiotropic Effect)理論につながっていく。

【SATURN STUDY】 Study of Coronary Atheroma by Intravascular Ultrasound :  Effect of Rosuvastatin Versus Atrovastatin Effect of Two Intensive Statin Regimens on Progression of Coronary Disease (N. Engl. J. Med. December 1, 2011) 

ストロング・スタチンの両雄同士を最大用量で激突させたスタディ (クレストール®1日40mg VS リピトール®1日80mg のいわゆる強化スタチン用量) この試験はある意味、当時世界的に最も売られていたリピトール®の後発品が市場に出回る前にクレストール®がリピトール®よりもベネフィットのある薬剤であることを示すためにAstraZeneca plc(NYSE:AZN)社が企画した試験。
結果は LDL低下率はクレストール®>リピトール®でクレストール®に軍配 。
しかしながら、プライマリーエンドポイントであるアテローム体積率(percent atheroma volume:PAV)について リピトール®に比べてクレストール®の方に低下が認めれたものの有意差はなし。  一方、セカンダリーエンドポイントである 総アテローム体積(total atheroma volume:TAV)では、 リピトール®に比べてクレストール®で有意な低下が認められた。
これらをそのまま日本人に当てはめてよいものかどうか? 上のJUPITERの結果にはバイアスの存在も指摘されていて また心血管疾患(CVD)の既往のない高リスクの1次予防集団では、スタチン療法(平均3.7年間)による総死亡の有意な減少は認められないことが、11試験の6万5000例超を対象としたメタ解析(上のTable参照)から明らかになっている 。こうしてみるとスタチン療法のカギは、
心血管疾患・脳卒中のリスク評価につきると思うし、個別のエンドポイントの見極めが肝要になってくる 。Statinの費用対効果も含めた功罪は、いずれ歴史が証明することになると思う。

LDLの低下だけではない「心血管疾患の二次予防効果がある」っていうのをパブリッシングしたのがこちら↓ 

Antiatherothrombotic Properties of Stations:  Implications for Cardiovascular Event Reduction (Clinical Cardiology May 27,1998) 
 これがいわゆる StatinPleiotropic Effect
(プレイオトロピック・エフェクト:多面的作用と訳される)の元祖。

ここでちょっとブレイクしてStatin全般を↓
【発見】
1971年三共(現:第一三共)の発酵研究所に所属(当時)していた遠藤章のグループは、
HMG-CoA還元酵素を阻害する物質の研究を開始。 
HMG-CoA還元酵素はメバロン酸の合成に必要な酵素であり、メバロン酸は菌類の細胞膜・細胞骨格構成成分の重要な素材であることから、自己防衛手段としてこの酵素を阻害する物質を持つ微生物が存在するのではないかと彼らは考えた。
1973年6,000種に及ぶ微生物を検索した結果、遠藤らはアオカビの一種 (Penicillium citrinum) から最初のHMG-CoA還元酵素阻害薬であるメバスタチンを発見。
彼らはメバスタチンの構造やHMG-CoA還元酵素を阻害するメカニズムについて解析すると共に、実際に血中のコレステロール値を低下させることができるかどうか動物実験による検討。 
ラット・マウスなど齧歯類では再現性のあるデータを得られなかったもののニワトリやイヌそしてより人間に近いサルでは血中コレステロール値は20-50%程度低下 メバスタチンの効果を実証することに成功した(wikipedia)。
【製品化】
ヒトの脂質異常症患者や健康なボランティアを対象にした小規模試験においてもメバスタチンの有効性が示され1979年に日本国内での臨床試験が開始。しかし長期高濃度投与実験を行っていたイヌで副作用が発生したことを受け臨床試験は1年余りで中止。
一方メバスタチンの効果に関心を寄せていたアメリカの大手製薬企業・メルク(現MSD)社は
遠藤からサンプルやデータの提供を受けながら独自に研究開発を進めた結果コウジカビの一種 (Aspergillus terreus) から新たなスタチンであるロバスタチンを分離することに成功した。 
その後の臨床試験でロバスタチンは安全性が比較的高く、メバスタチンと同程度のコレステロール低下作用を持つことが示された。
1987年アメリカ食品医薬品局(FDA)から医薬品としての認可を受け、ロバスタチンは製品化された最初のスタチンとなった。

スタチンの発見は脂質異常症と関連疾患の予防および基礎研究に多大な進歩をもたらした。
遠藤と共同研究を行いコレステロールの代謝・作用機序を解明したアメリカのマイケル・ブラウンとジョーゼフ・ゴールドスタインの2名に1985年度のノーベル生理学・医学賞が贈られている。
遠藤もまた「スタチンの発見と開発」における一連の業績により2006年の日本国際賞さらに2008年には「アメリカのノーベル医学生理学賞」とも言われるラスカー賞(臨床医学研究部門)を受賞。
日本では、東海大学内科助教授(当時)中谷矩章、京都大学老年科教授(当時)北徹、金沢大学内科助教授(当時)馬渕宏らにより1989年にプラバスタチン(商品名メバロチン)が製品化された(wikipedia)。

本題のStatinのPleiotropic Effect 。
臨床での使用を重ねるとともに前述した多くの試験なども含め、その心血管病の予防効果が実証されてきたStatin当初はこの効果がコレステロール低下による効果と考えられてきたが、 コレステロールがそれほど低下しなかった患者やもともとコレステロール値が高くない患者に対しても有効であることが分かり、 コレステロール低下作用以外に重要な薬理作用があるという確証につながった。

Statinが作用するHMG-CoA Reductaseの作用でメバロン酸が産生、さらに脱カルボン酸反応を経てイソプレンとなる イソプレンは、ユビキノン、ビタミンK、カロテノイドなどの原料にもなる。続いてファルネシルピロリン酸(F-PP)やその産物のゲラニルゲラニルピロリン酸(GG-PP)が 産生されるが、これらが低分子のGTP結合蛋白(GTP-Binding Protein、G蛋白)である Ras、Rho、Racなどのイロプレニル(脂肪付加)化の成分となる。 G蛋白ではイソプレニル化されることがその本来の機能獲得に必要であり、それで本来の持ち場にもつくことができる F-PPはRasやラミニン、GG-PPはRho、Rab、Racなどのイソプレニル化に関与する。


これらのG蛋白は、細胞周期の調節 ・血管内皮細胞からの一酸化窒素合成酵素(NOS)の誘導 (NOは内皮由来の血管平滑筋弛緩因子(EDRF)の本体) ・血管平滑筋の遊走 ・組織プラスミノーゲンアクチベーター/インヒビター(t-PA/t-PAI)の発現 ・NAD(P)H 酸化酵素 (NADPH oxidase)活性など 、プラーク形成において重要な細胞増殖、遊走や酸化などの細胞機能に役割を果たしている 。Statinが投与された組織では、動脈硬化病変のコラーゲン含量が増加・メタロプロテアーゼ(MMP)活性が低下している。またStatinを投与することでNOS活性が亢進、梗塞サイズの縮小といった効果が明らかにされ、これは局所の血管拡張とNOの血小板減少抑制作用に大きく影響された結果と解釈できる。


まとめると、  コレステロール合成系のHMG-CoA還元酵素関与点以降で 酸化ストレスなど動脈硬化形成プロセスに関与するシグナルを伝達する低分子G蛋白の Rho、Ras、Racなどを成熟型にする脂肪付加(プレニル化)をする中間代謝産物があり、それらがStatinで減少 ↓ プレニル化によってG蛋白はその本来の作用が発揮でき、それぞれの持ち場につく プレニル化産物の減少、すなわち Rho↓Rac1↓Ras↓は細胞内Caの増加を抑制 。こうしてStatinがLDLコレステロール減少効果とは別に 抗動脈硬化作用を発揮していることにつながっていく。

プレニル化反応(Prenylation):疎水性のプレニル基をタンパク質に付加する反応  
プレニル基はグリコシルホスファチジルイノシトールなどのように、タンパク質の細胞膜への結合を促進すると考えられている。
G蛋白:グアニンヌクレオチド結合タンパク質の略称 
セカンドメッセンジャー・カスケードに関連するタンパク質のファミリー。細胞内の生化学的反応を切り替える「スイッチ」としてグアノシン三リン酸 (GTP)をグアノシン二リン酸 (GDP)へ替えるため、この名がついている。これを発見し調査したアルフレッド・ギルマンとマーティン・ロッドベルは1994年のノーベル生理学・医学賞を受賞。 
RhoファミリーG蛋白:低分子量Gタンパク質の一種で、主に細胞骨格の制御 代表的なRhoファミリー分子は、RhoA、Rac1、Cdc42の3つ それぞれについて特異的なエフェクター(=下流分子)が複数存在し、それぞれの特異的な機能を実現している Ras蛋白(Ras):低分子GTP結合タンパク質の一種で、転写や細胞増殖、細胞の運動性の獲得のほか、細胞死の抑制など数多くの現象に関わっている分子  Rasの異常は細胞のがん化に大きく関わるのでras遺伝子は原がん遺伝子の一種。



今回紹介した【ロスバスタチンRosuvastatin商品名クレストール®CRESTOR 】  は水溶性ストロング・スタチンの代表 
一部メーカーのバイアスのかかった情報で、脂溶性のスタチンが抹消組織に入り込んで薬剤固有の作用として抗動脈硬化作用他を示す可能性を再三再四アナウンスされ、 もう耳にタコができるほど・・・ それはこちらも百も承知。その可能性があるのは分かっているんですが・・・。
水溶性のロスバスタチンやプラバスタチンが肝臓以外の組織に入り込んで作用することは考えられない ⇒このことがすなわちスタチンの多面的な作用であり、それらの作用はHMG-CoA Reductaseの阻害による コレステロール合成系の下流にある副産物との関係を示唆する 。むしろ脂溶性スタチンの多臓器親和による弊害 (インスリン抵抗性の増大や心筋等の各臓器におけるATP含量の低下)をも考慮して、総合的なリスク&ベネフィットを勘案して薬剤選択していかないといけない 。ちなみに水溶性スタチン服用中は狭心症など心虚血時の心収縮の回復が早いと いわれている。

親水性スタチンは能動輸送(アクティブトランスポート)により肝細胞に特異的に取り込まれる
薬剤師もスタチンを「コレステールの薬です」っていうのいいかげんやめましょう
【最後に製品としてのクレストール®の感想】
2.5mg~20mgまで美しい線形な体内動態 1日1回の服用&3日で定常状態 食事の影響なし。
標的臓器である肝臓への速やかで選択的な分布&中枢移行なしと、動態的にはほぼ申し分なし。
 見よ!この美しぎる臓器・組織分布を(クレストール® IFより)
クレストール®錠 2.5mg weekly sheet
クレストール®錠 5mg weekly sheet
2.5mg錠 直径 5.5mm
5mg錠 直径 7mm









高齢者でも服用にストレスのないサイズかつ分割・一包化はもちろん 粉砕・経管投与でも動態に影響なし。残念なのはPTPシートが無駄に大きい・へこみやすい・出しにくい。


クレストール®まとめ(類薬比較)
有効性 ★★★★★  速やかな効果発現と豊富なエビデンス
安全性 ★★★★★  水溶性の利点をいかんなく発揮した高い安全性  
利便性 ★★★★    ストレスのない製剤 簡便な用法・用量                 
難点はPTPシートが無駄に大きい・へこむ・出しにくい  
動態力 ★★★★★  ほぼパーフェクト It's so beautiful linear pharmacokinetics
経済性 ★★★★    コストパフォーマンス良好だが、これもジェネリック発売まで     
総  合  ★★★★★  その至高の動態プロファイルと有効性・安全性が合致した名作                    ※注意 まとめ・評点は個人の勝手な意見です

数あるスタチンの中でクレストール®のみがジェネリック未発売(※米クレストール訴訟の影響)。
まだジェネリック発売時期は未定。その発売とともに先発品はその役割を終えますが 、それまでは大いに頑張ってほしい薬剤です ※米クレストール訴訟
これによって物質特許が2016年7月まで有効に→ジェネリック発売は少なくともこれ以降に

2015年10月
ようやくあの使いづらかったクレストールのPTPシートが新包装になりました。
ジェネリック発売を間近にして遅きに失した感はありますが。