☆【Xarelto イグザレルト®錠】抗凝固薬ランキング Today's medicine Vol.1

薬剤師の視点で臨床現場でキーとなる薬剤を紹介していきます


2015年5月14日 第1回
2015年12月23日 更新

リバーロキサバンRivaroxaban 商品名イグザレルト®Xarelto
開発コード:BAY 59-7939

イグザレルトの紹介の前に抗凝固薬ランキング

Ranking of Anticoagulant drug 
抗凝固薬ランキング(あくまで個人の意見です)

1位 イグザレルト®(Bayer) Rivaroxaban
日本人に合った製剤・用量設計。1日1回のストレスのない用法・用量。高価だがそれに見合ったパフォーマンス。血液分野でのバイエルの歴史に敬礼。詳しくは本文で。

2位 ワーファリン®(Eisai) Warfarin
50年以上も人々を安価に脳卒中から救い続けた功労者。国家財政的にも勲章もの。50年経った今でも高齢者にはいろんな意味で第一選択。これ以上ないコストパフォーマンス。ワーファリンがそつなくまともに使えて初めて一人前の循環器医・総合内科医。納豆たべられなくっても死にません。

3位 リクシアナ®(第一三共) Edoxaban 
Made in JapanのNOACs。1日1回の用法・用量が便利。先行したDVTへの適応のおかげで豊富な実臨床データ。ただしそのDVT適応のおかげで薬価設定がおかしなことに(30mg≒60mg)60mg、1/2錠の処方が増えて薬剤師泣かせになりそう。もちろん技術料はとれません。      
4位 エリキュース®(Bristol-Myers Squibb) Apixaban
4番手のNOACs。これといった特色がないのが特色。1日2回なのが悲しい。1日2回だからどうなの?なんていうのは薬の本質を理解していないDRやMRがいう話。じゃあ、あなた毎日規則正しくのんでみます?循環器のコントロール用薬剤で1日1回と2回の差はあまりにも大きい。残念。
5位 プラザキサ®(Boehringer Ingelheim)Dabigatran etexilate
カプセルでかい、高齢者にリスキーかつ1日2回で分かりにくい用法・用量、湿気に弱くて分包できない…誰が考えたんだこの製剤!くらい使いづらい。箱が大きすぎて保管に困る。酒石酸を添加剤に加えなければならなかった物性の悲劇。あげくはBA%低くて消化管出血リスク。これ飲んで胃腸が大丈夫な人は自信もってください。他の抗凝固薬が使えないときのファイナルアンサー。


リバーロキサバンRivaroxaban 商品名イグザレルト®Xarelto
開発コード:BAY 59-7939     



箱やシートデザインはドイツのメーカーらしく

とても合理的かつシンプル(いいかえると簡素というか質素)


ドイツBayer社(現Bayer HealthCare社)で開発された
世界初の経口投与可能な選択的・直接作用型の第Ⅹa因子阻害剤


※もともと日本での一般名はリバロキサバンだったがスタチン製剤の「リバロ」と混同されるおそれがあり医療安全性の観点からリバーロキサバンとなった



※これまでイグザレルトおよび他の新規経口抗凝固薬(プラザキサ・エリキュース・リクシアナ等)の総称としてNOACs(Nobel Oral AntiCoaglants)”=「新しい経口抗凝固薬」が使われてきたが、

最近ではワーファリンに対しての
”NOACs(Non-vitamin K antagonist Oral AntiCoagulants)”=「非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬」
と改めて呼ばれるようになった(たしかにいつまでも新しくはない)
こんなことでもワーファリンの偉大さが実感できる

Xareltoイグザレルトの作用機序動画(日本語Ver.)


【特色】

日本人非弁膜症性心房細動患者を対象とした国内第Ⅲ相試験J-ROCKET AF】を有し
これにより日本人に適した用量設定が可能となった



Rivaroxaban


構造は 血中の遊離第Xa因子及びプロトロンビナーゼ複合体に結合した第Xa因子を共に阻害するよう最適化されたオキサゾリジノン誘導体

第Xa因子活性部位との親和性が高く選択的かつ直接的に第Xa因子を阻害し、しかも良好な体内吸収(経口吸収ほぼ100%)と高いバイアベイラビリティ(これもほぼ100%)も有する薬剤効果発現も速やかに得られ 作用は可逆的で1日1回投与

(投与4時間後に第Xa因子の阻害効果が最大となり、
効果は8〜12時間持続する ただし第Xa活性は24時間以内では回復しないため1日1回投与)

競合品のエリキュース・プラザキサが1日2回の服用が必要であるのに対してこの点なんとも優位性が高い

さらには5mg~40mgまで美しい線形な薬物動態を示すとても優れた薬剤また製剤的にも10mg錠・15mg錠とも直径6mm高齢者でも服用にストレスのないサイズ

かつ分割・一包化はもちろん粉砕・経管投与でも動態に影響がない
このあたり 薬剤師的にはもっとも好ましい特性をもち  非の打ち所がない




【 J-ROCKET AF 】

Japanese Rivaroxaban Once Daily Oral Direct Factor Xa Inhibition Compared with Vitamin K Antagonism for Prevention of Stroke and Embolism Trial in Atrial Fibrillation



国際共同試験(ROCKET AF)に対して日本単独で行われた試験
ROCKET AF試験の通常用量設定が20mgであったのに対して
薬物動態データ(Cmax、AUCなど)から日本人での通常用量設定を
15mgとして独自に行われ  個人的には結果的にこの用量設定が功を奏したと思う



一次エンドポイントとして安全性の非劣性の確認試験として計画

この領域でのDB実施はハードルが高く開始前は不安視されたが完遂したのは
先駆的かつ画期的
(その後のApixabanのARISTOTLE、DabigatranのRE-LY、EdoxabanのENGAGE AF-TIMI 48 
いずれもDBで実施された)

ワーファリン群のTTR(Time in Therapeutic Range: 治療域内時間→ワルファリンの投与期間の中で、目標とするINRの範囲が維持された日数が全体の何%かを表す指標で、低くなるに従って、脳卒中発症率が上がることがわかっている)
は65%に維持され 質の保たれた対照群との比較の中で

頭蓋内出血がワルファリンに比べて50%と明らかに低く
重大な出血に至る消化管出血が上部・下部とも少ないことが示された

この点で15mgの用量設定が素晴らしかったと思う

有効性主要評価項目(イグザレルトの承認効能・効果である評価項目について抜粋)
安全性主要評価項目の詳細
重大な出血事象の内訳(出血部位別)
注意点はROCKET AFと J-ROCKET AF ともCHADS2スコア平均が3.2の症例が対象と
なっていること(CHADS2スコア2点の症例は約1割、多くは3点以上の症例)
CHADS2スコア1点の症例については 市販後のエビデンスがまたれている





■ 警告

・出血リスクを考慮して投与の適否を慎重に判断すること
・本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確率されていない
・本剤の抗凝固作用を中和する薬剤はない
詳細は添付文書を参照

NOACsの中和薬としてandexanet alfa(リバーロキサバン、アピキサバン)、
PER977(エドキサバン)idarucizumab(ダビガトラン)の第Ⅲ相試験が現在進行中


■ 禁忌

・腎不全(クレアチニンクリアランス15mL/min未満)の患者
・HIVプロテアーゼ阻害剤を投与中の患者
・アゾール系抗真菌剤の経口又は注射剤を投与中の患者
※その他は添付文書を参照


■ 効能・効果
非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制

これ暗記

■ 用法・用量
通常、成人にはリバーロキサバンとして15mgを1日1回食後に経口投与する
なお、腎障害のある患者に対しては、腎機能の程度に応じて10mg1日1回に減量する

エリキュースと微妙に表現が違う(ここ大事)

カリキュレータ(WEBアプリおよびスマホアプリ) by Bayer

■ 相互作用(これがイグザレルトの唯一といってもいいウィークポイント)
CYP3A4および2J2で代謝されることと
P-糖タンパク(P-glycoprotein)および乳癌耐性蛋白(BCRP)の基質であることがポイント
このためいくつか併用禁忌薬剤が存在することになった



イグザレルトまとめ(類薬比較)

有効性 ★★★★★  CHADS2リスクを有する日本人患者において確認された有効性

安全性 ★★★★   頭蓋内出血はワルファリンの半数  

利便性 ★★★★★  簡便な用法・用量 

動態力 ★★★★   優れた物性と製剤力を併せもつ が相互作用がウィークポイント   

経済性 ★★★     高薬価だがコストに見合うパフォーマンス

総  合  ★★★★   バランスと利便性に優れた薬剤


※注意 まとめ・評点は個人の勝手な意見です