4月10日 生化学者マーシャル・ニーレンバーグ生誕

1927年4月10日 生化学者 マーシャル・ニーレンバーグ生誕 

2015/07/21 に公開
Presentation of the Nobel Prizes for 1968. Personalities as listed: King Gustav Adolf. VI. on his right: Princess Margaretha. Crown Prince Carl Gustav. on his left: Young Princes Christina and Prince Bertil. Front Row: Prize Winners: Luis W.Alvarez - U.S.A. Physics. Lars Onsager - U.S.A. Chemistry. Physiohology and Medicine shared by: Robert Holley - Gobind Khorana - Marshall Nirenberg. all U.S.A. Literature - Yasunari Kawabata - Japan. Professor Onsager - asleep on chair. Swedish singer Birgit Nilsson entertains.

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マーシャル・ニーレンバーグ


マーシャル・ニーレンバーグ
ノーベル賞受賞者ノーベル賞
受賞年:1968年
受賞部門:ノーベル生理学・医学賞
受賞理由:遺伝情報の解読とそのタンパク質合成への役割の解明
Marshall Warren Nirenberg(1927年4月10日 -2010年1月15日 )は、アメリカ合衆国の生化学者、遺伝学者で、遺伝暗号の翻訳とタンパク質合成の研究で、ロバート・W・ホリーハー・ゴビンド・コラナとともに1968年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

研究

1959年までに、オズワルド・アベリーフランシス・クリックジェームズ・ワトソンらの研究によって、遺伝情報を保持する分子はDNAであることが明らかとなっていた。しかし、DNAがどのように複製し、DNAの情報がどのようにタンパク質に伝わり、またその過程でRNAがどのような役割を果たすのかは分かっていなかった。ニーレンバーグはアメリカ国立衛生研究所のハインリッヒ・マッシーとともにこの問題に答えようとした。彼らは、ウラシルのみで構成されたRNAを作り、このRNAを、DNA、RNA、リボソームほかタンパク質合成に必要な細胞装置を含んだ大腸菌の抽出液に加え、さらに余分なDNAを分解するDNA分解酵素と5%の放射標識アミノ酸、95%の通常のアミノ酸を加えた。すると、放射標識されたフェニルアラニンを含む抽出液で、得られたタンパク質に放射標識が見られた。この実験によって、遺伝暗号UUUはフェニルアラニンを意味することが明らかとなった。これはコドンの解読の第一歩であり、伝令RNAの役割を始めて示した実験である。

ニーレンバーグはこの実験で大きな注目を集めた。数年後に彼らは同様の実験を行い、アデニンだけからなるAAAはリシンシトシンだけからなるCCCはプロリングアニンだけからなるGGGは何もコードしないことを明らかにした。次のブレイクスルーは、ニーレンバーグの研究室の大学院生であるフィリップ・リーダーがもたらした。彼は運搬RNAの配列を決定する方法を考案したのである。この方法によりコドンの解読は一気に進み、50のコドンの解読が終了した。コラナの実験によりこれらの結果が検証され、遺伝暗号は完全に明らかとなった。


リボソームは、一連の伝令RNAen: Messenger RNA)を読み取り、転移RNAen: Transfer RNA (TRNA))に結びついたアミノ酸から所定のタンパク質を組み立てる。

小胞体に分泌されるタンパク質を組み立てているリボソーム
伝令RNA(messenger RNA)は、蛋白質に翻訳され得る塩基配列情報と構造を持ったRNAのことであり、通常mRNAと表記される。DNAに比べてその長さは短い。DNAからコピーした遺伝情報を担っており、その遺伝情報は、特定のアミノ酸に対応するコドンと呼ばれる3塩基配列という形になっている。mRNAはDNAから写し取られた遺伝情報に従い、タンパク質を合成する(詳しくは翻訳)。翻訳の役目を終えたmRNAは細胞に不要としてすぐに分解され、寿命が短く、分解しやすくするために1本鎖であるともいわれている。

古細菌、真正細菌では転写されたRNAはほぼそのままでmRNAとして機能する。一方真核生物では転写されたmRNA前駆体はいくつかの切断、修飾といったプロセシングを受けたのちに成熟mRNAになる。

真核生物のmRNAはRNAポリメラーゼIIによって転写されたRNAに由来する。5'末端にはm7Gキャップがあり、3'末端は一般にポリアデニル化される(poly (A)鎖で終了している)。これらの構造やmRNAの塩基配列は翻訳活性やmRNAの分解を制御する機能も持っている。古細菌、真正細菌も3'末端に短いpoly (A)鎖を持つが、5'末端のキャップ構造は持たない。

poly (A)鎖はrRNAtRNAには存在しないmRNAの特徴であるとされており、このことを利用してmRNAを特異的に精製することができる。また、mRNAを鋳型にしてDNAを逆転写酵素によって合成することができ、これはcDNAと呼ばれる。cDNAは遺伝子が働いていることの非常に信頼性の高い証拠であり、ゲノムプロジェクトによって得られた大量のシークエンスデータの中から遺伝子を探す作業を補助することができる。

遺伝子発現とRNA

遺伝子発現のプロセスの一つ、転写は細胞核内にて行われる。DNAに刻まれた遺伝情報(遺伝子)は、RNA合成酵素によりmRNAに転写される。DNAがすべて転写されるのではなく、必要な分だけ転写される。遺伝情報はmRNAの塩基によってコドンの形式でコードされ、全20種類のアミノ酸に対応している。遺伝情報を受け継いだmRNAは核から細胞質へ出て、リボソームに付着する。ここでmRNAの遺伝情報に従い、特定のタンパク質が合成される。

RNA 中の翻訳領域

翻訳段階においてmRNA の情報は一部分しか解読されない。各mRNA のタンパク質翻訳領域はコーディング領域と呼ばれ、1つのコーディング領域は1つのタンパク質を指定している。翻訳は開始コドンから始まり、終止コドンで終了する。コーディング領域の両端がmRNA の両端に届くことはなく、開始コドン上流に5' 非翻訳領域(five prime untranslated region:5' UTR)があり、終止コドン下流に3' 非翻訳領域(three prime untranslated region:3' UTR)が存在する。

真核生物におけるmRNA の殆どはモノシストロン性のmRNA(monocistronic mRNA)で1 つのタンパク質を翻訳する一方で、原核生物のmRNA の多くはポリシストロン性のmRNA(polycistronic mRNA)で幾つかのタンパク質を翻訳する。

また、近年ではpoly (A) 鎖や5' 末端のキャップ構造を持ちながら、コーディング領域を持たずにノンコーディングRNA としてはたらくRNA も確認されている。

伝記

ニーレンバーグは、ハリーとミネルバの子としてニューヨークで生まれた。彼は子供の頃にリウマチを患ったため、一家は亜熱帯性気候のフロリダ州オーランドに引っ越した。彼は生物学に興味を持ち、フロリダ大学で動物学を専攻し、1948年に学士号、1952年に修士号を取得した。彼は修士時代にはトビケラの生態学と毒性について研究した。そして1957年にミシガン大学で生化学の博士号を取得した。

彼はアメリカ癌学会のフェローとして1957年にアメリカ国立衛生研究所で研究を始め、1960年にアメリカ国立衛生研究所所属の生化学者となった。1959年よりDNAからRNA、タンパク質に至るセントラルドグマの研究を始めた。ニーレンバーグの画期的な研究が認められ、彼は1962年に生化学・遺伝学部門の責任者となった。1961年にはブラジルのリオデジャネイロ出身の化学者であるペロラ・ザルツマンと結婚した。彼女は、2001年に他界した。2005年にコロンビア大学医科大学院教授(疫学)のMyrna M. Weissmanと再婚した。

1964年にリンドン・ジョンソン大統領より国家栄誉賞を授与された。2001年にはアメリカ哲学会の会員に選ばれた。


2012/06/05 に公開
Dr. Marshall Nirenberg, with co-winners Robert W. Holley and Hr Gobind Khorana, was awarded the 1968 Nobel Prize for Physiology or Medicine in recognition "for their interpretation of the genetic code and its function in protein synthesis." Dr. Nirenberg was the first NIH researcher and federal employee to receive the honor. His work helped set the stage for the genomic era we are living in today. In the summer of 2009, Dr. Nirenberg reflected on his NIH career (which began in 1957).