BS1シリーズ コロナ危機「グローバル経済 複雑性への挑戦」最終章

BS1シリーズ コロナ危機
「グローバル経済 複雑性への挑戦」





最終章『withコロナ時代 新たなグローバル経済への提言』


トーマス・セドラチェク
「これはパラダイムの転換かもしれません。例えばチェコ共和国ではパートタイムの仕事を家でするkuzarbeit(短時間労働制度)というものがあります。これは2009年から私たちが顧問団としてチェコ政府に提案してきたことで、これまで一度も実現したことがありませんでしたが、今では数日で実現しました。コロナウイルス危機以外の状況で実現しないような新しいアイデアは提案しない方がいいと思います。私たちには使えるアイデアがたくさんあります。」Withコロナを前提に 働き方のスタイルを変えよ~






ジョセフ・スティグリッツ
「優先順位や回復を考えるとき、この状況は我々の経済を古いものから21世紀型の経済に変革するために利用できるチャンスになるかもしれないと思います。我々は世界的な気候変動の危機にあるのです。そしてそれが意味するのは我々がパンデミックから脱した時にリソースを経済再構築にあて、そして再生可能エネルギーを拡大すべきというものです。クルーズ船は必要ありません。それは海洋を移動するのに多くのエネルギーを消費します。それほどエネルギーを使わずに自然を楽しむ方法が必要です。そして環境を守るのです。ですから経済再構築においてそれが優先事項の第一となります。
~環境問題の為にも21世紀型経済に変えるチャンス~



飯田泰之
「素晴らしい自由主義経済というものを維持するためには自由主義経済じゃない経済活動、または経済活動ではない社会的な活動の存在が必要不可欠だと。大切な自由主義経済、最も大切な自由主義経済を守るためには自由主義ではない経済圏が必要だと。」
~自由主義のために自由主義以外の経済成長が必要~








ペリー・メーリング
「以前よりもより多くの人にとって有効な新しいグローバリゼーションを築いていくためには経済的なパラダイムシフトと同様に社会的なパラダイムシフトが必要です。それが出来なければ、新しいグローバリゼーションは実現しません。それが出来なければ国民から反対され、結果的に国際的分業や国際貿易のメリットを失うことになるので、誰もが損をするような経済的自立政策に逆戻りすることになるでしょう。ですので大きな危険をはらんでいます。パラダイムシフトが必要なのです。「この状況から抜け出してどうにかするのだ」に賭けるしかないのだと思います。私はパラダイムシフトがすでに起きたものとして自分の人生を生きていきたいと思っています。ポジティブなことに自分もその一部であると感じています。実際に何が可能なのかを知る唯一の方法は計画を立てるのではなく何かを作り始めることです。この新しいポストコロナウイルスの世界の一部になるにはどうしたらいいのかをぜひ考えてみてください。トップダウン方式で浮かび上がるものではありません。これは専門家たちが集まって明らかになることではなく、各国がお互いの取り組みをみて、「それはいいアイデアだ」とか「それは考えてもみなかった」と言いながら各国がそれぞれ進化していくということです。新しい世界を私たちで連携して作っていくのです。政治的に関与していくことが重要な意味を持つと思います。これはエリートの課題ではなく、みんなの課題なのです。」あなたも私もパラダイムシフトの一員~




ルチル・ファルマ
「私たちは今、危機の最中にいます。そんなときに判断や予測などをやたとするべきではありません。冷静さを失っていますから。ご存知のように2001年アメリカでは同時多発テロ事件がありました。飛行機に乗る人がいなくなって航空業界が破綻するだろうとか、いろいろなことが変わるだろうと多くの人は考えました。しかし世界は2年後にはまた元通りに戻っていました。もちろん変わった部分をあります。中東に対するアプローチは一変しましたし、特定の宗教への偏見も生まれました。今回の危機の対応についても非常に慎重になるべきだと思います。ポスト危機の世界はどうなるのかを考え始めた時、危機以前からすでにはじまっていた脱グローバル化や債務恐怖症といったトレンドは、危機の終焉後、加速していくと思います。中国のことわざに、中国の人に「フランス革命についてどう思いますか?」と聞いたら、大昔に起きたことなのに、「その影響についてはまだ考え中です」と答えたという話しがあります。つまり今回の危機に関しても今即断するのではなく熟考する必要があると思います。これが世界を変える唯一の危機でもありません。」即断するな 熟考し続けよ~




小幡 績
「日本は一番問題なのは、世界の中で最も思考停止に陥っている社会だと思います。ですからこれから監視が強まって危険なのではないか。また逆にこれまでの自由一辺倒では問題なのではないか。世界では両方に極端に振れているわけですけれども、成り行きやたまたまその時の流れでどっちかにつくという可能性があると思います。逆にそういうふうに決まってますからそこのそのシステムに不安が生じたときに逆なんじゃないかっていう不安が高まっていつまでも足元が定まらない。軸が定まらない社会になるおそれがあると思います。とにかく安心を求めるのはやめましょうということなんですね。つまり不安がありすぎるとパニックになってこれはまた冷静な判断を失う。ところが不安がなさすぎても思考停止感覚停止になってボーっとしてしまうということですからいけない。なおかつ政治の・・・政府にも国民が不安解消を求めても国民を思考停止に陥らせる政策をとってはいけないというふうに思います。」安心と不安の狭間で思考停止することなく・・~






マルクス・ガブリエル
「カミュが示したのは、我々は現実には一人だということでした。”死ぬときは皆一人だ”と。これが古典的な実存主義の標準的な仮定です。しかし重要な反論があります。いつの時代も最高の政治哲学者の一人ハンナ・アーレントの出生の概念です。未来は存在するという事実を我々は考える必要があります。今この瞬間深く未来を形作れるはずなのです。私の「新実在論」でもそのことをプロポーズしています。未来は根源的に開かれています。”すでに未来は自動的に決まっている”その思い込みと戦わねばなりません。」

~未来は開かれている~


グローバル経済は複雑に拡大してきたが
実はその原理は単純なものだった
「利潤を最大化せよ」
そして今ウイルスという資本主義の外部からの衝撃が
そのテーゼに根本的な疑問を突きつける。



トーマス・セドラチェク
「だから経済の心を象徴的に読み取ってみると世界は疲弊しているのだと解釈できるかもしれません。あなたは疲れている。私たちの馬は疲れている。私たちに機械は疲れている。自然は疲れている。私たちは自然を燃やしすぎた。なぜか?それは私たちがもう少し大きなフラットスクリーンが欲しいから、少しでも速い車が欲しいから、休息を取ることはおそらく頻繁にはできませんが、私たちは例えば、夜に火を囲んで語り合うような理想の田舎暮らしに嫉妬しています。テレビも携帯電話もインターネットもなく世界のあらゆる狂気もないような暮らしです。象徴的にはそう読み解けるかもしれません。」

コロナと共にある 経済 社会
異物を抱えながらも複雑性の中 平衡感覚をもって歩めるか
私たちは今 試されている。