BS1シリーズ コロナ危機「グローバル経済 複雑性への挑戦」第1章

BS1シリーズ コロナ危機
「グローバル経済 複雑性への挑戦」

第1章  コロナ危機 そのとき世界は?













新型コロナウイルスによる社会の閉塞、経済の混乱、出口はまだ見えない。
この危機は世界経済の在り方をどこまで変えるのか。
株価 景気 雇用 GDP 産業構造は…?
目まぐるしい変化のなか 世界の経済は 
そして 日本は一体どこへ向かっていくのか。

シリーズ「コロナ危機」グローバル経済の今これからを考える今回
これまで「欲望の資本主義」で社会の歪みを鋭く分析してきた知性たちが
危機の本質に迫る 

中国からWHOに最初の感染の報告があったのは2019年12月31日のこと。
ひとつき足らずの間に中国政府は都市封鎖に踏み切る。
その後も感染は止まらず、世界へと拡大。アメリカも非常事態宣言を発した。
大国の動きがストップしたことで株価は急落。
世界経済をけん引してきたアメリカの失速。
各国で巻き起こる混乱 株価の乱高下。

第一章 コロナ危機その時世界は?

この状況をそれぞれの視点で冷静に見つめる知性たちがいた。

ノーベル経済学賞受賞のアメリカ経済界の重鎮
ジョセフ・スティグリッツ(経済学者/コロンビア大学教授)
著書『プログレッシブ・キャピタリズム』他

「短期的に経済を下降させているのがいわゆるソーシャル・ディスタンスです。お互いに近寄りたくないしレストランや買い物にも行けない。しかし中長期では一切合切の問題が明らかになります。個人や企業の経営状態(バランスシート)は悪くなっていくでしょう。多くの人が深刻な流動性の問題に直面します。総需要というものが重要になります。


というのも経営状態(バランスシート)が悪化すると人々は物を買わなくなるからです。そしてソーシャルディスタンスの問題からもっとおなじみのかつ我々がこれまでに対応した何よりも難しい問題へと姿を変えていきます。すると総需要と流動性の問題、同時に供給側の問題が発生、もはや未知の領域ですから慎重に考えていきたいと思います。この状況とどうにか脱するにはある程度のスキルと思慮深さが必要となります。」


各国の企業家たちが信頼を寄せ、世界で最も影響力をもつ歴史学者の一人
ニーアル・ファーガソン(歴史学者/ジャーナリスト)
富をめぐる人類の繁栄と滅亡の歴史を洞察。著書『スクエア・アンド・タワー』他

「巨大なネットワークは良いものも悪いものも伝達する」
「私たちはこれまでの自分たちのネットワークは良いものしか伝達しないと考える傾向にありました。ところが残念ながら皆さんもよくご存知のとおりウイルスというものはデジタルであれ生物学的であれ迅速性を重視して作られた巨大なグローバルネットワークを通れば、非常に素早く移動ができるのです。今回はそれが起きてしまいました。ですから私は驚いてもいませんし、自分が予言者だともおもっていません。」



世界経済においてはグローバル化と反グローバル化は繰り返す波のようだ。
世界的な視野で新興国の市場を分析するエキスパート。
ウォール街きっての知性として知られるストラテジスト。
ルチル・シャルマ(投資銀行グローバル・ストラテジスト)
25年にわたり各国を調査 情報を分析
『シャルマの未来予測 これからの成長する国 沈む国』

「私は世界はBC(ビフォー・コロナ)すなわちコロナ危機以前とAC(アフター・コロナ)すなわちコロナ危機後に分けられると考えています。世界を新たにBC・ACのように分けられると思っています。コロナ危機後のDeglobalization=脱グローバリゼーションとDebt phobia=債務恐怖症の期間がやってきます。コロナ危機後はこの2つのトレンドは長引き、世界の成長は少なくても戦後レベルまで低い状態が続くでしょう。」




哲学や宗教も探求する奇才。幼少期に社会主義を経験しその後チェコ共和国大統領の経済アドバイザーとしても活躍した
トーマス・セドラチェク(チェコスロバキア商業銀行チーフストラテジスト)
大統領の経済アドバイザーも務めた異端の奇才 著書『善と悪の経済学』
「これまで私たちはGDP成長率や他のことで国が他国と争ったり、他国を打ち負かそうとしたり競争したりしてそれ自体を統合することができないグローバルな文明、すなわち「文明タイプ0」の状態にありました。しかし私たちは今ともに戦わなければいけないと理化する文明へと変化しているのかもしれません。ウイルスにとっては国境や宗教の違い人種の違いも関係ありません。貧乏または金持ちのどちらかに感染する訳でもありません。全体主義体制においても自由民主主義においても平等なのです。ですのでとても興味深い危機であります。このカタルシスにうまく対処できれば人類の団結が試されているとも捉えられるこの試練を共に考えて団結する機会だと捉えるのであれば…。あなたが何人でも関係ありません。問題は同じです。科学的に協力することで改善し、理想としては各国がとっている安全対策を同期させるべきだとおもいます。」



市場に対する中央銀行の新たな役割を考察。
ペリー・メーリング(金融史・経済史学者/ボストン大学教授)
コロンビア大学パーナードカレッジで30年に渡り教鞭と執る
シンクタンク「新しい経済思想研究所」のメンバー
著書『金融工学者フィッシャー・ブラック』

「今はパラダイムシフトの時期で前の生活に戻ることはないと思います。今回のショック 公衆衛生だけでなく経済的なショックによって私たちを結び付けている”網”のような約束の複雑さが明らかになったということです。支払いの約束 負債 契約 私たちの未来はこの支払いの約束の”網”を通して築き上げられています。あなたが約束してくれたから私はより安心する。私も他の人に約束して…世界全体がこの約束の”網”で成り立っていましたが、今回の危機によってそれはさまざまなかたちで切り裂かれてしまいました。」










欧米の首脳たちが「戦争」と呼ぶコロナ危機
すでにリーマンショックを超えて世界恐慌に匹敵する規模の打撃をもたらすという意見も。各国の政府も思い切った財政出動や金融政策を打ち出し、経済へのダメージを最小限に食い止めようと必死だ。だがショックや不安に対してどんな政策のマスクを配れば、その拡大を防ぐことができるのか。経済のかじ取りを期待された各国の政府は手探りを続けている。

第2章 グローバル経済から一転 国家が前線に立つ時 へ