BS1シリーズ コロナ危機「グローバル経済 複雑性への挑戦」第3章

BS1シリーズ コロナ危機「グローバル経済 複雑性への挑戦」第3章

BS1シリーズ コロナ危機
「グローバル経済 複雑性への挑戦」


社会の不安定性も増幅する危機。
実は準備されていたのか?
利潤の追求のみの欲望と生存のための
切実な欲求がすれ違う社会。
今非常事態の中でねじれた経済 
格差の構図が浮かび上がる。
グローバル経済の力強さはコロナ危機によって
弾け飛んでしまったのか?
国境を越え、流動性を高め、コストの低い国を探し
少しでも多くの利潤を得るべく投資する。
市場の原理に忠実な戦略が今や弱点となったとしたら…。


第3章『コロナ以前 すでにあった危機』

ルチル・ファルマ
「今回の危機が起きる前から私は4Dの世界というものについて話してきました。第一に人口動態的に見て世界的な大規模な人口増加期は終わりました。

1 Demographics 人口動態
日本は世界有数の少子国家といわれてきました。しかし現在40ヵ国以上が生産年齢人口の縮小している日本型国家となっています。1980年代と比較して大きな変化です。16歳から64歳の生産年齢人口が縮小している国はなかったのですから。



2 Declining productivity 生産性の減少
2つ目の要素が生産性です。戦後に見られた生産性の拡大は世界金融危機後には見られていません。その理由としてはゾンビ企業の台頭があったり、新しいテクノロジーが消費者志向でゲームやデジタル娯楽全般などエンターテインメント提供型になっていて生産性向上にはさほご貢献しないことが挙げられます。


3 Deglobalization 脱グローバル化
現在は脱グローバル化の時代と定義されており、世界はどんどんつながっていくどころか世界の主要地域ではモノやサービスや人の移動や資本の移動を阻む保護主義が台頭し障壁がどんどん増えています。
4 Debt 負債 
そして4つ目が負債です。負債は上昇基調にありますが、1980年から2008年の期間に見られたような大幅な増加ではありません。経済の多くのセクターが2008年にひどい目にあって以来、借金を作ることに慎重になっているからです。

以上の 人口動態 生産性の減少 脱グローバル化 負債 の4Dが1950年から2008年には平均4%あった世界の経済成長を2.5~3%近くへとすでに押し下げていました。トレンドベースの成長率は更に低下すると思います。現在起きている状況を見るとポスト・コロナ危機の世界すなわちアフター・コロナウイルスACの世界では脱グローバル化のペースがさらに加速するでしょう。第2に多くの経済主体が債務恐怖症に苦しんでいるように思います。債務恐怖症とはさらなる借金を恐れることを意味します。借金をしなければ成長するための資金がないことになります。これがポスト・コロナ危機の世界の現実になると思います。2008年の金融危機以降各地で見られてきた脱グローバル化と債務恐怖症はポストコロナウイルスの世界ではますます加速していくことでしょう。」


グローバル化への過剰適応は砂上の楼閣

それをおそれ逃げ出す動きが加速する。

だが一体どこへ向かって逃げればよいのか…。





ペリー・メーリング
「コロナウイルスが流行する前の世界経済やグローバルサプライチェーンなどを思い出してみるとそれは非常に統合されたものでした。生産や発送、ジャストインタイム生産などをする上で各国が協力する必要がありました。反応や影響がそれぞれ異なるのですべてが同時に回復することはとても困難になります。ですので私の予想ではすぐには回復しないと思います。これが短期的な見方です。長期的な面でいうとこちらの方が懸念点が多いのですが、コロナウイルスの感染が拡大する前に私たちが世界経済を動かしてきたやり方は変わるでしょう。以前のようなかたちではなく私たち自身が新しいグローバル経済を再構築すると期待しています。それには時間がかかります。協調するという政治的な課題が出てきます。

短期的・・・サプライチェーン回復
長期的・・・政治的協調






金融のグローバリゼーションにおけるインフラの弱点が危機によって明らかになりました
私の広くない見解ではありますが、これはつまり下水の配管のようなもので、パイプが壊れて壁から水が噴き出してくるまでは配管の事は心配する必要がありません。グローバリゼーションが正当化され・・・生産性の向上によりグローバリゼーションの勝者は敗者を補償することができるはずだと。しかし言うまでもなく彼らは補償しませんでした。」

国の規制や保護を必要としないグローバリゼーションの勝者たち。
いつしかそれ以外の人々への保護も忘れられたのか。

ニーアル・ファーガソン
「移民の大量発生、ポピュラーの台頭といった様々な要因によってグローバリゼーションの巻き戻しが起こっています。2019年後半だと米国と中国とのデカップリング(分離)は無理だという人たちがいましたが、私はそんな彼らに対して1914年の英独間でもそれはできたのだから米中間でもそれは可能なはずだと反論してきました。

パンデミックはデカップリングを加速する



私はパンデミックの時こそデカップリングが加速されるのだと思います。今の国際体制は見直す必要がると考えます。製造拠点としての中国に過剰に依存した体制には根本的は欠陥があったのです。世界はそのような根本的に不安定な体制に依存していました。」

グローバル化がはらんでいた根本的な不安定さ。

ならば時を戻して考えてみてはどうか。

以前に回帰するためでなく根本的な枠組み。

パラダイムの転換を模索するために・・・。


コロナ危機への対症療法にとどまらないグローバル経済の大転換は可能か。

この先も繰り返す可能性があるといわれるパンデミック。

災害や戦争と同じように地上から根絶できないものだとすれば・・・。


ブラックスワン 白鳥の群れに黒い鳥を見つけた時の衝撃を指す金融危機で用いられる用語だ

「ありえない」この言葉を何度も繰り返してきた私たちだが今回は・・・。

ほとんどの人は「ブラックスワン」は聞いたことがあるでしょう。「ドラゴンキング」はその一段階上です。

ドランゴンキング unknown crisis 未知なる危機

非常にまれな歴史的なショックについて、私は新型コロナウイルスの大流行と第一次世界大戦の勃発とを比較してみました。そこには大きな類似点があったからです。」

歴史を知る知性たちがコロナ危機の本質について一斉に声を上げ始めた。

グローバル経済の問題と絡み合うこの連立方程式を果たしてどう解いていくのか。

テクノロジーによってデジタル化したグローバル資本主義

コロナ危機がもたらすのは停滞か加速か。

ブロック化か更なるグローバル化か それとも・・・?

経済の行方をそして人類が進むべき道を世界の知性たちと共に探る。



アルベール・カミュの「ペスト」が話題だ。

新型コロナウイルス感染拡大の中、人々は作家の想像力に現代にも通じる心のあやを見出そうとする。中世のペストは少なくとも3度にわたり大流行を見せた感染症だ。魔術から科学へと人々の認識は進歩したが死への恐怖を感じた時、人間な不条理な行動は昔も今も変わらない。他者への疑心暗鬼にとらわれる人々。それはグローバル化に背を向け閉ざされた社会へと向かうのか。遠く離れた異質な社会を結び付けてきた資本主義のネットワークは一時停止を余儀なくされた今どうなるのか。後編は歴史の中に現代の危機を越えるヒントを探り、今後を展望する。
今、必要な発想の転換とは?

第4章 歴史の針をどこまで巻き戻す?