BS1シリーズ コロナ危機「グローバル経済 複雑性への挑戦」第5章

BS1シリーズ コロナ危機
「グローバル経済 複雑性への挑戦」

第5章 「経済が弱者を追い詰め 社会を壊す?










ニーアル・ファーガソン

「パンデミックの対応において位置データやSNSデータが効果的な政策において欠かせないことがはっきりしました。なぜGoogleやFacebookやAppleはもっと積極的に政府にデータを提供しないのでしょうか?感染が疑われる人たちを追跡してリスクを突き止められるようなアプリがまだないのでしょうか?なぜ(欧米は)台湾や韓国のような小さな国に大きく後れを取っているのでしょうか?その答えはGAFAのような大手テクノロジー企業が公共に対する責任を果たしていないからです。」

今やドイツのGDPを上回るほどの株式時価総額を誇る巨大プラットフォーマーGAFA。人々の行動 例えば外出やマスク購入などの記録は、極めて公共的なデータとしてパンデミック収束に役立てることができるといわれている。情報の独占から公共の利益へ。企業と国家の協力は いかにして可能か。




「大手のテクノロジー企業 特にAmazonやGoogleなどは今回の危機によってさらに強くなるでしょう。実際、身体的接触と関係ないテクノロジー企業は今回の危機によってさらに成長するでしょう。ほとんどの国が経済を支えるためにあらゆる財政メカニズムを使っていますが、大企業を優遇する傾向があります。中国は小規模企業よりも国有企業の利益を優先させていますし、アメリカは中小企業よりも大企業に多くの資金を振り分けています。そのため独占とまでいかなくても複数の市場で寡占が進むでしょう。アメリカ国内ではすでに大手企業が優遇されるという明確な差別があると思います。おそらくヨーロッパでも同じでしょう。」


ルチル・シャルマ
「どの政府も今回の危機はまったく予想外のショックであり、勝ち組・負け組を選ぶようなことをすべきでないことを認識することが重要だと思います。つまり企業にはほぼゼロ金利で融資を受けられるようにする中で、「この業界は救済する」「この業界は救済しない」などと(政府が)選ぶことがないようにすることです。危機が収束することが前提ですが、融資が受けられるよう門戸を開き、返済を猶予することです。いずれにしても勝ち組・負け組を選ぶことのないようにしないと将来的に問題が出てきます。」

強い者は より強く。
危機によって膨張する ひずみ。
鬱積した負のエネルギーは いつ どうのような形で現れるのだろう。




ペリー・メーリング
「私は今 家の中で安全に椅子に腰掛けてインターフェイスを介して世界に向けた話をしています。物に触れることはなくウイルスからのあらゆる脅威をカットしています。しかし食料品店で働いている人や私の食べ物や手紙を配達する人たちは外にいます。医療従事者やほかの人たちからも同じようなことを聞きます。彼らはとても大きなリスクを背負っています。消防士やその他最前線で活動している人たちも同じです。私たちはこのような人たちに対していつか返さなければいけない借りを潜在的に蓄積しています。コロナウイルスの危機が過ぎた頃に私たちはそれらの借りを返すことになります。もし私たちがその借りを返さなければ大きな社会不安に陥ってしまいます。」

お金の取引は 単なる数字ではない。
その背後には 様々な感情が伴う。
不安や いらだち 憎しみの蓄積は
社会を不安定にさせ 経済システムの欠陥を露呈させる。




ジョセフ・スティグリッツ
「アメリカで全面的にみられる独占力について私は長く懸念していましたが、特にGAFAについては心配です。彼らが与える損害は独占力の行使よりもより幅広いものになります。プライバシーの侵害 情報の利己的利用 政治的操作 煽動 ヘイトスピーチ そしてそれについての対応を彼らが拒否していることなどです。興味深いことの一つは彼らが長い間 そうした問題についてはなすすべがないと言っていたことです。反事実と呼ばれるもの 誤った情報の拡散 ワクチンが危険だというようなもの しかしついにこの危機において彼らはコロナウイルスに関する誤った情報を取り除くことができました。その危険性に気付いたからです。このことは我々にあることを伝えます。つまり今まで彼らは利益増強のために社会の安寧を喜んで犠牲にしてきたということです。誤った情報を除外する能力はあったのにそういう選択をしなかったのです。金儲けのためです。これは世界的な動きとなって適切な行動をとることになるでしょう。彼らの独占力と社会への損害を抑制できるからです。我々はそれを行い、同時に民主主義を維持することができます。」


かつでないほどの集中を見せる データの力。
経済の要を握る その情報の流れを どう使えば
危機を脱する力に変換できるのか。
そこに データ経済のワナは ないか。


第6章 「距離」のビジネスが世界を変える